「その口内炎…、甘く見ないで!」
日常診療の中で、なかなか治らない口内炎に遭遇する先生方も多いのではないでしょうか? その中には、QOLを著しく低下させたり、生命を危険に晒す「口腔がん」が隠れていることをぜひとも知っていただきたいと思います。
口腔がんは、口の中(舌、歯肉、頬粘膜、口底、口唇など)や周囲組織に発生する「がん」であり、全身にできるがんの中で1~3%を占め、年間約8千人が新たに発症しています。さらに、60歳以上に好発し、高齢化が進む昨今では、発生率、死亡率ともに増加の一途をたどっています。数年前に、タレントの堀ちえみさんを襲ったのも、この病でした。
口腔がんには、前兆となる症状があります。口腔潜在的悪性疾患(以前は、前癌病変と言われていました)とよばれ、将来的に口腔がんになる可能性が高い状態であり、代表的なものに「白板症」と「紅板症」があります。白板症は、上皮過角化を示す白斑状のザラザラした病変で、3・1~16・3%(約10%)が癌化すると言われています。さらに紅板症は、上皮性異形成を示す鮮紅色ビロード様の病変で、50%以上の癌化率を有しています。
アフタ性口内炎(いわゆる口内炎)や褥瘡性潰瘍であれば、ステロイド軟膏や原因となる機械的刺激の除去、レーザーによる蒸散で約1~2週間で上皮化し治癒に至ります。なかなか治らない口内炎や、次の・~・の症状は要注意です。
・2週間以上治らない口内炎がある。触ると硬い。
・口腔内に白色あるいは鮮紅色の粘膜病変がある
・口腔内に痛みや出血する部位がある
・原因不明の歯の動揺がある
・抜歯後の傷口が治らない
・顎下リンパ節、頚部リンパ節に無痛性腫脹がある
口腔内の病変は、肉眼的に直視が可能であり、また触診も容易にできます。前記のような症状が見られた場合は、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科やかかりつけ歯科などへの受診をお勧めします。
(常任理事 梅津 健太郎)