近年、高齢者への虐待が増加し、川崎の有料老人ホームで介護スタッフが入居者を投げ捨て3人も死に至らしめる痛ましい事件があった。 高齢者への虐待を防ぎ、介護する家族の支援も図る「高齢者虐待防止法」が2006年4月に施行され、 間もなく 10年になるが、この間にも高齢者虐待は増え続けており、行政や施設も有効な対策を見いだせていないのが現状だ。 厚労省によると全国の自治体が確認した高齢者虐待は、 2006年と2014年度を比較すると 27%増加したとのこと。特に増加が際立つのは介護施設や居宅サービスの職員による虐待で、2014年度は300件で 2012年度の155件から 2年でほぼ倍増した。その被害者の85%は認知症の方と言われている。
高齢者虐待と言ってもその種類はさまざまで、身体的、心理的、性的、経済的虐待および介護放棄等があり、介護施設で多いのは暴力行為を伴う「身体的虐待」や「心理的虐待」などで、「介護放棄」 も多くなっているとのことです。
介護職員による虐待が 起こってしまう原因は、・認知症ケアの難しさです。 特に「行動障害」とも呼ばれていますが、対応は十人十色です。その人となり(誕生から現在まで) を知らずして症状のみに対応していたら振り回され、対応困難となります。・職場が常に慢性的な人手不足、特に最近は他業種からの参入により有料老人ホームが 顕著な増加を認め、過去10年間で10倍とも言われている。 ・職場教育の不徹底や研修不足による知識・技術不足: 1つには人手不足のため研修にも出せない現状で、経験の乏しい職員に頼らざるを得ない。 ・職場内の人間関係など。
ではどうすればいいか。最近は景気回復の兆しが見え、 介護職員が他職種に流れる傾向にある。 日本高齢者虐待防止学会の顧問田中荘司さんは、「仕事の割には介護職員の社会的な評価や賃金が低く、専門性を高める教育や研修が不十分なのが問題。職員が適切にコミュニケーションができているかといった監査ができる仕組みを取り入れるべきだ」と述べている。
今後2025年に向け、病院の平均在院日数もさらに短縮され、これら有料老人ホームなどを含め介護施設等の重要性はさらに増すことが予想される。 しかし一方では介護施設の 閉鎖や倒産の増加の報道 を見聞きするにつけ、われわれ団塊の世代は一体どうすればいいか。このままではアホノミクスの新三本の矢も刀折れ、矢尽きることが予想される。 根本的には介護報酬を引き上げ、魅力ある職場にすることで多くの介護職の人が働きやすい職場にすることが大事である。 消費税増税時等の公約は一体どうなったのだろうか。十分に福祉に回っているだろうか。まさかお得意の公共事業や大企業の減税に回っているのではないでしょうね。
(常任理事 古賀 聖祥)
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