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わたしたちの主張
平成30年11月15日
非課税とゼロ税率の決定的違いに苦しむ日本の医療
 1997年(平成9年)4月消費税が5%となり4~5年がたったころから京都府保険医協会や愛知県保険医協会などから、「医療へのゼロ税率適用」を訴える声が大きくなってきました。
 当初は小生も税制音痴の事もあり「医療は非課税」だから消費税増税とは無関係だと高をくくっていたのですが、実はこの「消費税の非課税制度」により税の負担が生じるようになり、病院経営を圧迫してきているという事を知らされ、ちょっと文献をあさってみました。特に来年10月からは10%になることで医療機関へのダメージが徐々にボディブローとなっていき、「赤字国債償還にはさらに25%にまで押し上げる」という暴論までささやかれるに至っては今の「非課税」を維持していく限り、日本の医療機関のみならず全国民が壊滅的打撃を受けることになるのです。
 本来「消費税は最終消費者が全額支払う」もので、納付税額は課税売上高に税率を乗じた金額から仕入れ時に支払った税額を控除して算定されます。同時に各段階で仕入れ時に「支払った消費税」は、消費税の納付時に控除され払い戻しが受けられるのです。日本式「消費税を課さない」はずの「非課税」制度とは「最終消費者」(患者)に提供した役務提供に対してのみ「消費税を課さない」という変な解釈になっているのです。
 欧州各国では日本のような「非課税」ではなく原則消費税の「ゼロ税率」が採用されています。欧州の付加価値税のゼロ税率も、日本の消費税非課税の保険診療での窓口支払いでの患者の消費税負担額はともに0円で同じです。しかし、医療機関側は大違いで、欧州のゼロ税率では医療機関側が負担している薬品会社や問屋などの仕入れ段階で支払った消費税は還付されるので医療機関も患者も消費税は0円だが、日本型の「非課税」は特殊な解釈になっていて、最終消費者が患者ではなく医療機関になっているため医療機関が薬品会社や医療機械会社に既に支払っている消費税は1円も払い戻しされないのです。このまま10%になれば増税分はまるまる医療機関の負担になるわけです。
 政府は診療報酬を上げてこの「損税」にあてろと言うが、あまりに少額なので補填(ほてん)には程遠いのです。ゼロ税率にすれば「損税」も解消されるのです。
 これに対し、「日本の輸出企業は消費税増税で笑いが止まらない」のです。消費税が5%になった平成9年の年末頃の本欄で小生が、「トヨタやキャノンなどの輸出企業など上位10社の消費税還付金合計が1兆円を超えた」と報じたが、10%にもなれば払い戻し額は2~3兆円にもなるわけで経団連が消費税増税に賛成するのも納得される。日本の消費税は「輸出」についてのみ、最終消費者に消費税を負担させないゼロ税率(完全非課税)がおこなわれているのです。
 医療機関も輸出企業と同じく最終消費者(輸出企業は貿易対国、医療機関は患者)から消費税を徴収できないわけだから、医療機械や薬品の購入で払った消費税の還付を欧米の医療機関や日本の輸出企業と同じようにしなければ、日本の医療福祉の未来は暗たんたるものになるのは明白である。
    (顧問 野田 芳隆)
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