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わたしたちの主張
平成27年8月15日

安保関連法案がもたらしたもの

 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案は、7月16日衆院本会議で与党の賛成多数により可決され参院に送付された。政府、与党は憲法の規定(60日ルール)を適用した衆院再可決も視野に入れており、法案は成立する公算が大きい。

 安倍首相は衆院本会議後「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐために、絶対に必要な法案だ」と発言した。確かに東にアメリカ、北にロシア、西に中国という超大国に囲まれているわが国の安全保障環境は年々厳しさを増しているといえる。ただ平和主義を貫いていれば戦争から免れるというのでは、鎖国をしていれば異国は攻めてこないという江戸幕府の政策に等しいものがある。

 しかし、この法案の問題点は、憲法解釈変更の合理性が説明できていないこと、存立危機事態の認定基準の曖昧さである。憲法を改正しこの法案の可決を目指すというのであれば、それには十分な議論と国民の理解がなければ成立は難しいであろう。それを省略して法案を通すことは今後さらに際どい法案が成立することをも可能にしかねない。加えて存立危機事態や重要影響事態がもっと明確に限定されなければ議論自体がまず机上の空論であり、むしろ国民の命を危険にさらし、戦争に巻き込まれる可能性が増えると考えるのが筋といえる。

 しかし、私はこの法案によってもたらされた良い影響があると考える。それは国民が平和について、あるいは民主主義について真剣に考え意見をするようになったことである。この法案に関してはさまざまなメディアでも話題となり、反対する人は抗議デモという形で意思表示をしている。それがゆとり世代、さとり世代と言われた若い世代でも起きていることは特筆すべきことではないだろうか。民主党政権とその前の自民党末期のねじれ国会による「決められない政治」から「決められる政治」に変わった今だからこそ、有権者は国政に対して責任を持つべきだと思う。

  (理事 今道 友之)

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