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わたしたちの主張
令和6年3月15日
「点数改定で垣間見た国の姿勢」

 2024年度の診療報酬改定の内容、マイナンバーカードの健康保険証利用の流れを見ていて腑に落ちないことがありました。それは、「これから」賃上げしたらインセンティブ、「これから」マイナカードの利用率が上がったらインセンティブ、という国の手法です。
 今回の施策では、マイナカードの保険証利用については〝2023年10月時点と比較した時の2024年1月以降の増加率を評価〟、賃上げ分の補填については〝2024年4月以降に賃上げを行うことが要件〟となっています。つまり、現時点で低賃金に抑えている医院や、マイナカード対応を行っていない医院が「これから」対応した方が大きな伸び率を達成することができ、インセンティブを得られるという仕組みです。
 私の医院では、ここ数年の、働き方改革、消費税増税、物価高騰、人手不足や国の賃上げ促進などを受けて、その都度従業員の待遇改善と賃上げを行ってきました。
 また、マイナカードの保険証利用についても、積極的に勧めることはしていませんが、それでも比較的早い段階から機器を導入して対応してきたので、そこそこの利用者がいます。結果、国の方針に早くから対応し、求められる体制により近い数値目標を達成しているにも関わらず、否、〝既に優秀であればあるほど〟かえってインセンティブを得られないということになります。
 極端な例を挙げれば、10年前から時給1500円を出し続けている医院よりも、最低賃金の900円を貫いてきて、4月以降にしぶしぶ1000円にアップした医院の方が「ご褒美をもらえる」、そういう仕組みです。
 これは、携帯電話業界の「新規0円」キャンペーンに似ています。新規獲得という目先の数字欲しさに、ずっと前からその会社を気に入って協力してくれている古参のファンをないがしろにするような姿勢の表れだと感じています。
 実際には、当院(おそらく他の多くの医院も)の賃上げも保険証利用も、国のインセンティブが本来の目的ではないので構いませんが、こういう、国からの協力要請があった時に「速やかに協力対応をすると損をする」「後乗りした方がうまみがある」ような手法を目の当たりにすると、ただでさえ、長年の政治家の不祥事や昨今の裏金問題などで国民の不信感が最大限に高まっている中、選挙同様、国民に心からの信頼を得るための努力をせず、「表面上で場当たり的な支持を得さえすればいい」という国の姿勢が垣間見えます。ますます協力する気が萎えてしまいそうです。
  (理事 古庄 龍央)

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