政府は4月8日に任期が満了する黒田東彦日銀総裁の再任を決めた。日銀総裁の再任は戦後3人目となる。 政府は黒田総裁が「異次元緩和」と銘打った大規模金融緩和で景気回復や株価上昇を後押ししたと高く評価し、金融市場の安定やデフレ脱却に向け日銀の緩和路線継続を求めている。黒田総裁は就任当初「2年程度をめどに2%の物価上昇率を達成する」と宣言し異次元緩和を開始し、急速な株価上昇や円安による景気拡大を実現した。 しかし、物価上昇率は14年の1・5%を境に停滞し、2%の目標達成時期の予想は6度にわたって先送りされてきた。先の見えない金融緩和路線の継続に対し結果責任を問う声も上がってきており、特にゼロ金利政策の影響をもろに受けた銀行、生命保険業界からは悲嘆の声が上がっている。 輸出好調な大企業は円安の恩恵を受けて得た莫大な利益を用いて、積極的な設備投資や賃上げを行い景気全体の底上げに貢献すべきなのに、経済動向がまだまだ不透明なためいまだ実行に移せず内部留保をため込んでいる。富裕層は株式や投資によりますます富を増やす機会を得たが、貧困層はマイナス金利により貯蓄を増やす機会すら奪われてしまった。 長年続いたデフレからの脱却を目指したこと、世界的な金融情勢に対応したことは黒田総裁の功績といえる。しかし麻薬のような金融緩和策を実質的な結果が出ていないにもかかわらず長期乱用し、一部の人間にしかその恩恵を与えられていないことは明らかに罪と言えよう。 始めることは簡単でも終わらせることが難しい金融緩和。黒田総裁の「異次元緩和」の向かう先がどこなのかこれからも注視していきたい。お金が紙くずのようになってしまう時代は歴史の教科書の中だけにしてもらいたい。 (理事 今道 友之)
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