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わたしたちの主張
平成27年5月15日

2016年診療報酬改定への思い

 2016年度の診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会の議論がスタートし、国会でも2015年度政府予算案が閣議決定された。

 社会保障予算では3年に1度の介護報酬改定が焦点となり、減額に反対していた現場の声は聞き入れられず、9年振りのマイナス改定で決着した。現場からは「人手不足が常態化している」「このままでは経営困難に陥る」と不安も漏れる。

 昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2014)で「サービス事業者の経営状況等を勘案して見直すとともに、安定財源を確保しつつ、介護職員の処遇改善、地域包括ケアシステムの構築の推進等に取り組む」とうたった結果がこの始末だ。

 年末に予定されている2016年度診療報酬改定の攻防に際しても、大同小異の結末が予想される。なぜなら、医療保険の費用はGDPの伸び率を超えて増加している上、特に高齢者医療費の負担が、国・自治体の財政、各保険者の財政、被保険者の家計を圧迫しており、こうした構造的な問題は介護保険と何ら変わらないからである。

 これらのことを踏まえて、社会保障・税の一体改革が進められている。国民皆保険の下、医療費の対GDP比はOECD諸国の中で中位にあるが、世界一の高齢化水準に鑑みれば、医療関係者の献身的な努力で世界に高く評価されるコストパフォーマンスを達成してきたことは国も認めている。今後の超少子高齢化社会においても国民皆保険を堅持するため、「消費税率を上げ、その財源を活用して医療サービスの機能強化を進める」と言うが疑わしい。

 歯科では、今次改定より「在宅歯科診療の推進」点数の大幅引き下げや、在宅療養支援歯科診療所に在宅患者の訪問診療を誘導するなど歯科訪問診療を変容させ、2025年に向けてさらに低医療費の歯科診療を保険医や患者に押し付ける方向が示された。歯科医療の危機を食い止め、歯科医療の質の確保と安全を保証できるよう、歯科医療費の総枠拡大と診療報酬の大幅引き上げが喫緊の課題である。国は財源がないと言いつつ、財源を増加させる分野もある。

 われわれ医療人は、国民が安心安全な医療が受けられるよう、医療現場や患者の立場に立った声を届けなければならない。

(副会長 新井 良一)

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