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わたしたちの主張
平成28年8月15日

患者のための「かかりつけ医」とは?

 今年4月に診療報酬改定が行われ、歯科では「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)が新設されたが、歯科会員からは算定上の問題が多いと指摘されている。

 届出・算定のハードルになっているのが、「歯科医師の複数名配置(または歯科医師および歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置)」「AEDや歯科用吸引器(口腔外バキューム)等の配備」などの11項目の施設基準である。クリアできる診療所には「う蝕予防」「歯周病安定期治療」「在宅患者訪問口腔リハビリテーション」に関してのみ、未届出医療機関とは別評価となっている。歯周病安定期治療を例に挙げると、残存歯数にもよるが、診療報酬は2倍以上になるのである。これは、点数に格差を設ける一物二価を持ち込み、医療機関の峻別化を図ると言っても過言ではないと思う。

 他にも歯科訪問診療料や医科の在宅患者訪問診療料など、「同一建物に一日に何人訪問診療を行ったか」により点数格差が設定されており、同じ患者でも日によって訪問診療料の一部負担金額が異なってしまうこともある。患者としては、自身ではどうしようもない(選択できない)理由により一部負担金に差が生じるのは納得ができないだろうし、われわれとしても患者へ説明し納得してもらうことが困難である。

 本来、風邪をひいたとき、お腹が痛いとき、歯が痛いとき、目が痛いとき等々の症状が出現した際に、自宅や職場の近隣で、迅速に受診できるのが「かかりつけ医」と考えるが、厚労省も「かかりつけ医」の役割については、「国民が身近な地域で日常的な診療を受けたり、あるいは健康相談ができる医師としての役割を果たし、医療連携を行い、患者の病状に応じて適切な医療機関を紹介など、患者の視点に立って患者又はその家族と連携が取れるよう適切に対応できること。また、いつでも患者をサポートできる体制にあること」と提言している。一見、患者側の目線に立っているようであるが、「かかりつけ医機能」と言う、診療報酬上の言葉に過ぎないのではないだろうか。

 それは、「かかりつけ医機能」を持つ診療所としての国が定めた施設基準をクリアしなければ、病診連携・診診連携に参画できなかったり、また同じ処置を行っても、先に述べたように評価に差が出るのである。歯科では、口腔外バキュームの高額な機材が設置義務になっていることや、診療形態や地域事情、また歯科衛生士等の人材の問題で人員配置等ができずに「か強診」施設基準がクリアできない診療所がほとんどである。今後の改定に望むことは、医科歯科連携のさらなる推進と、施設基準で縛るのではなく、それぞれの医師・歯科医師の特性を生かしたやり方で「かかりつけ医」として地域医療に貢献できるような体制の構築などを期待したい。

 (副会長 新井 良一)
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