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わたしたちの主張
令和4年3月15日
「国民には適切なタイミングで適切な情報提供を!~医学界が「嘘つきのオオカミ少年」にならないために~」
 昨年秋、そろそろ今年のインフルエンザの予防接種の準備を当院でも始めようとしていた頃、今年のインフルエンザワクチンが例年と比べ供給が遅れる事が通達されました。当院では例年であれば、事前に予診票をお渡しして次回受診時に予防接種を施行する予約制にしていました。ところが今回は、やむなくシステムを変更し、希望者は受付にて当日申告していただき、ワクチンの在庫があれば、そこで初めて予診票をお渡しして、記入していただき接種するというシステムに変更しました。そのため、例年は、事前に記入していただけた問診を、通常の外来と並行して行わなければならなくなり、通常の外来が遅れて患者さんの待ち時間が伸びてしまう結果となってしまいました。

 諸般の事情によりワクチンの供給が遅れてしまった事は、やむを得ない部分もあったでしょう。しかしながら、私が指摘したいのは、今年のインフルエンザへの対応について、昨年インフルエンザは流行しなかったため、今年は大流行するかもしれないとする報道が、マスコミでかなり流布された事です。確かにインフルエンザの流行を予想する事は難しく、結果的に今シーズンは昨年同様、流行しませんでしたが、それは結果論というものです。それはそれで私たちは、常に最悪の事を想定して対策を講じる必要があるので、今年も、昨年インフルエンザが流行しなかったと油断することなく、例年通り、インフルエンザの予防接種を奨励する事は、至極当然であると思います。
 しかしワクチンの供給が遅れている事に鑑み「例年通り、慌てず予防接種を受けましょう」と呼び掛けるべきではなかったかと思うのです。ところがテレビなどのマスコミの多くは、今年、インフルエンザが流行するかもしれない事とワクチンが足りない事が、殊更協調され、国民の不安をあおる結果となりました。そのため、私のような小さなクリニックでさえ、ワクチンの問い合わせが来たり、他院で接種予定の患者さんが接種できず、接種を頼まれる事態となりました。ワクチンの供給の遅れを知らせる通達文には、ワクチンは11月、12月には供給量が増え、最終的には例年と変わらない供給量になるとの見解も示されていたにも関わらずです。
 また、今年、インフルエンザが大流行する根拠として、「昨年インフルエンザが流行しなかったため、日本国民が集団免疫を獲得していないため」とするものもありました。もし仮にそうであるなら、逆に前のシーズンにインフルエンザが流行すれば、翌年、インフルエンザのワクチンを接種しなくても良くなると思うのですが、そんな事は一度もなく、そもそもインフルエンザが流行したら、集団免疫を獲得して翌シーズンはインフルエンザが流行しないなんてことがあるのか、大変疑問です。
 今回、結果論とは言え、インフルエンザの大きな流行はなく、報道が国民の不安を過剰に刺激したと考えられ、ただでさえ新型コロナウイルス感染症の対応で疲弊している医療従事者に余計な負荷を掛けてしまった事は大いに反省すべきです。今年の秋にはまた、インフルエンザのワクチン接種が始まります。医学界が「噓つきのオオカミ少年」とならないために国民の不安を過剰にあおることなく、適切な情報が伝わる事を強く願います。
  (理事 今村 洋一)

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