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わたしたちの主張
平成27年7月15日

医療保険改革の意図

 今年度に入って国会周辺がかまびすしい。 

 まず最初に「労働者派遣法改正案」では、派遣先の意向で待遇が左右されたり、失職の不安にさらされながら低賃金での時間外労働を強いられると抗議のデモがあった。

 次に「安全保障関連法案」では「集団的自衛権行使」を合法としてよいかを問う憲法審査会で証言に立った憲法学者3人がそろって「違憲」と述べ、「飼い犬に噛まれた」として火消しのために、慌ててマスコミ批判を強化し、揚げ句の果てに「沖縄の二つの新聞社をつぶせ」論まで飛び出してきて、開いた口がふさがらない。憲法は元来「為政者が暴走しないように政治家を律するもの」であって政治家が「改正してしまえ」として変えてよいという筋合いのものではないことは誰でも知っている事である。この事は思い上がった独裁者のやる暴挙以外のなにものでもないわけで、全国民は納得できないし、決して許してはならないのである。

 最後に、われわれ医療人に関係の深い「医療保険制度改革関連法」は、「医療保険財政を安定させる」との名目のもと、与党の賛成多数で5月末に論議もなくあっさりと可決成立した。先の衆議院選挙では、「消費税を8%に上げるのは、医療・年金・介護などの社会保障関係に回すためだから」と国民に訴え、国民は「社会保障に回すためなら仕方ない」として一党独裁政権を生み出したわけだが、社会保障関連に回ったのは3%増税分のうちわずかその1割にすぎないという事実をあまりマスコミも触れていないし触れようともしないので国民は知る由もない。国民はいわば「だまされた」わけだがストライキするわけでもなく、暴動起こすわけでもない。

 その「医療保険制度改革関連法」では、まず入院時の食事代値上げで今自己負担は一食当たり260円だが、2016年度から360円、2018年度から460円とし1200億円の削減効果を見込んでいる。来年度から紹介状なしの大病院受診時に1万円前後の定額負担、基準月収121万円以上の会社員の保険料アップ、患者申告の「混合診療」が開始される。再来年度には後期高齢者の保険料軽減特例の廃止と会社員公務員組合の後期高齢者医療支援金負担が2400億円引き上げられるとの事である。年金は経年的に漸減される上に、介護保険料は当初は月3000円弱だったのが今や月5514円(全国平均基準額)となり、保険料を2年間滞納すると介護サービスの自己負担が1割から3割に増え、生活困窮者を直撃しているのである。このように3割負担になった人が全国で1万人を超え、今後徐々に増えていき「下流老人、明日は我が身」(週刊朝日)という時代がくるのであろうか。

  (顧問 野田 芳隆)

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