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わたしたちの主張
令和3年11月15日
日本は石炭火力の廃止を
 佐賀県では一昨年に続いて、今年の8月にも甚大な豪雨被害を受けた。本年8月9日「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書が公開された。この報告書では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と断言している。
 人類は18世紀半ばに起きた産業革命以降、多くの化石燃料を燃やして、大量の二酸化炭素を排出してきた。二酸化炭素などは温室効果ガスと呼ばれ、太陽から地球に届いたエネルギーが再び宇宙空間に逃げていくことを妨げ、地球にとどめる働きがある。そのため大気中で温室効果ガスが増加すると地球に熱がこもる状態となり、地球温暖化が引き起こされる。
 2021年のノーベル物理学賞には日本の真鍋淑郎博士を含む地球温暖化の予測に貢献した気象学者3人が選ばれた。炭酸ガスを中心とした温室効果ガスが、何十年に一度というレベルの豪雨被害を毎年のように発生させる濃度になったということである。
 しかも地球温暖化の影響は異常な豪雨だけではなく、巨大台風、35度を超す猛暑、森林火災、干ばつ、海面上昇、自然生態系の破壊などさまざまな問題の原因にもなっている。2018年の日本の猛暑により救急車で運ばれた熱中症の患者は9万人を超えた。
 温暖化を防止するためには炭酸ガスの発生を減らすことが必要である。日本の炭酸ガスの排出量が多いのは発電が39%、産業が25%で、これで6割を超す。電力分野での炭酸ガスの排出量の削減は現実的に重要であり、社会的な省エネと再生エネルギーへの転換が求められる。特に最大の炭酸ガスを排出する石炭火力と最大の環境汚染の原因となる原発はゼロにする必要がある。石炭火力利益共同体や原発利益共同体の抵抗は強いものと思われるが、持続可能な社会にし、地球温暖化を防止するには方向転換しかない。
 再生可能エネルギーに関してはメガソーラーや風力発電が乱開発とならないように、地域の中で受け止められ有効活用されることが必要である。
 省エネと再生エネへの産業の転換は国民にとって耐乏と苦労ではなく、新しい投資部門であり、国民所得を増やすことにもなる。日本はモンスーン気候であり、一定の風が吹く風力発電に向いた気候であるが、一方で風向きが変わりやすいという特徴もあり、日本の気候に適した風力発電技術が必要とされる。
 化石燃料はほとんど外国に依存しており、再エネに転換できれば年間9兆円の倹約となる。再生エネルギーで電力の44%をまかない、省エネにより40%のエネルギー需要を削減できれば、2030年の国連IPCCの炭酸ガス削減目標に到達可能である。とにかく石炭火力の廃止を。
(常任理事 山口 宏和)
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