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わたしたちの主張
平成27年12月15日

原発は本当に必要か?

 今年3月17日、福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年とする規定に従って、電力会社が廃炉を初めて決めた。美浜原発、敦賀原発の計3基である。翌日、玄海原発と島根原発の2基も廃炉が決定した。

 廃炉する原発は、原子炉を撤去し、建屋を解体した後、さら地に戻す。経済産業省は、期間は30年程度かかり、1基当たりの費用は350億0 834億円とみている。九州電力玄海原発1号機の廃炉費用は357億円と見積もられ、期間は30年を目安としている。廃炉に伴って発生する低レベル放射性廃棄物などの処分場所は決まっていない。廃炉決定は、「有効活用の観点から、運転延長申請の可能性を検討してきた」と対策工事のコストと収益を比較した上での経営判断であった。住民に与える不安や安全を考えての決断ではなかった。原発のリスクは自然災害やテロのような想定外の事態と考える。

 3月19日には、九州電力が7月に川内原発を再稼働させる計画を発表した。その後の8月11日、九州電力は川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、新規制基準に基づく審査に合格した原発の再稼働は全国で初めてである。2013年9月以降続いていた国内の「原発ゼロ」状態が1年11カ月ぶりに終了した。

 日本のエネルギー政策は原発に回帰したが、再稼働反対の世論は根強く、原発から出る「核のごみ」問題など重要課題も山積みしている。九州電力によると、川内1、2号機が再稼働すると月150億円の収益改善効果があるとのこと。大手電力は「安定経営を続けるには原発が欠かせない」と主張する。東京電力など原発を保有する電力9社が、稼働している原発がなかった2014年度に、プラントの維持、管理のため計1兆4千億円を使っていたことが分かった。各社はこの費用のうち多くを電気料金に転嫁している。収益を生まない稼働ゼロ状態でも1兆円を超す巨額の費用がかかる構造が、再稼働を急ぐ電力会社が「原発の稼働が必要」と説明する背景にある。

 今後も原発の再稼働が順次行われるだろう。経営優先、果たして福島の教訓は生かされているのだろうか。人命以外を最優先することは考えられないし、許せない。

(常任理事 千葉 研介)

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