『こどもの貧困』という言葉をここ数年よく耳にするようになった。特にひとり親家庭の貧困率は高く、背景の一因に養育費を受け取るひとり親(主に母子家庭)の少なさがある。平成23年の厚労省の調査では、母子家庭のうち養育費を受け取っているのは2割である。逆に言えば、離婚で子を引き取らなかった方の親の8割が養育費を払っていないということだ。子の権利・利益が十分に守られている状況とは言えない。
そんな状況を打破すべく、先駆的な取り組みを行っているのが、兵庫県明石市の泉房穂市長だ。注目すべきは、泉市長が「子どもの貧困対策をするつもりはありません」と明言していることだ。貧困家庭の子どもたちにターゲットを絞っているのではなく、あくまでもすべての子どもを対象に、サービスから漏れてしまう子が出ない支援を目指しているとのことだ。
平成26年度から明石市では離婚届を取りに来た人に、養育費の額、支払いの期間や振込口座、面会交流の方法・頻度・場所などを具体的に記入できる「こどもの養育に関する合意書」を配布している。合意書を配布するだけなく、民間団体と連携して月1回の専門相談会を開き、実効性のある取り決めがなされるようサポートもしているそうだ。
こうした取り組みは他市にも広がりつつあり、奈良市では平成28年度より養育費に関すること(取り決め、履行)・経済的相談(慰謝料、財産分与、相続等)等について、弁護士による法律相談を開始したそうだ。
しかし、他の先進国では、養育費を支払わなければ、給与口座から強制的に天引きする国もあるが、日本の民法は離婚時の養育費支払いを義務付けていないのが現状だ。
こうした背景もあり、法務省は民事執行法を改正し、裁判などで確定した養育費や損害賠償金の支払いを確実にするため、金融機関に口座照会への回答を義務付ける新たな制度を導入する方針を最近固めた。こどもの貧困の解消につながる早急な法改正を期待したい。
(理事 橋村 隆) |