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わたしたちの主張
平成28年11月15日

転ばぬ先の『杖』を今すぐに欲しい

▼「ドラえもん」へのお願いごと?一般的に「転ぶ」経験者は数多くいても「転ぶ前」に手を打って未然に大事を免れたという人は少ないでしょう。私も含めて痛い目に遭って初めて目を覚ます人が殆どでしょう。私は歯科を開業してこの11月で38年目になりました。病気で言えば「転んだ人」とは患者さんのことです。振り返るに今まで「転んだ人」には抱き起こすことを優先し、転ばぬ先の「杖」を差し伸べることをしてはいても、まだまだ不十分なように思います。やはり仕事的には「転んだ人」は勿論有難いのですが、転ばぬ先の「杖」を求めて来て下さる方にも正直ホッとした気分になります。

▼歯科治療に対しては「なきたいわ」{ながい(治療期間)きらい(治療自体) たかい(治療費用) いたい(治療方法)わからない(治療内容)}なる不満の頭文字語があります。むし歯と歯周病は予防可能の疾患だと思います。最近ではむし歯菌や歯周病菌が糖尿病、心疾患など多くの全身疾患の原因になっていることが分かって来ました。ならば歯ブラシ、フロス、その他予防グッズ、フッ素などは口腔疾患のみならず全身疾患の転ばぬ先の「杖」だと言えるでしょう。「なきたいわ」の人は、なおさら不満の前にこの「杖」を駆使して欲しいものです。そして治療より予防でやっていける歯科医を最近とみに望むのは私の勝手な夢物語でしょうか?

▼そんな夢物語を実現させている国が、フィンランドです。兄が30年前に仕事で家族とともに過ごし、リタイア後再度夫婦で住んでいる国で、高校生の数か月間のホームステイを受け入れたりもし、少々私にとっても身近な国です。今では福祉国家で有名ですが、40年前までは日本よりもむし歯の多い国でした。「人間が資本」の国ですので国挙げての予防の取り組みは「むし歯のない国」を作り上げつつあり、歯科医の仕事も治療から予防にシフトしつつあります。学校には歯科医が常駐し簡単な充填処置等は授業の休み時間などにするそうです。私の兄は近くの開業医を受診するも診療台1台の予防歯科専門で、日本の開業医ではする簡単な抜歯でさえ病院歯科を紹介されたと日本との違いに驚き、兄を診たフィンランドの歯科医は久しぶりに見る歯科治療の化石に驚いたことでしょう。

▼今や世界では大気汚染、戦争、テロ、難民、国内ではデフォルト級の借金、年々膨張する医療費、激甚災害、老人は種々の詐欺、熟年は年金、定年後離婚、中高年は生活習慣病、過労死、若者はスマホ依存、児童はいじめ、幼児は親からの虐待と、切迫の「転び」が蔓延しています。医療界にも・2025年問題・が目前です。「杖」を使うのは何時?今でしょう。その「杖」は「ドラえもん」に頼まなくとも「青い鳥」と同様、案外私たちの心の中にあるのかもしれません。

(監事 上松 誠八郎)

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