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わたしたちの主張
平成25年7月15日

小食多噛

 小食多噛

 健康十訓の中に「少食多噛」というのがある。幼少の頃、父母からよく「腹八分にして一口50回噛みなさい」と諭されていたのを当時は疎ましい事くらいにしか思っていなかった。ところが10年ほど前と2年前の2回、健康と長寿に関して、この「少食多噛」が大きく関わっているという示唆を与えられた。
 10年前に読んだ、博多が生んだ貝原益軒の「養生訓」(益軒の子孫で九州帝国大学細菌学助教授貝原守一先生が昭和18年に上梓した「貝原益軒養生訓」は正徳本や大和本草などを比較検討して医学者の目線で校訂された名著)に、「命の長短は身体の強弱よりも、つつしみを持って生きるか、欲望のままに生きるかによる所が大きい」という一節があったが、欲望のままに腹一杯食べることは命を短くしてしまうという事を教えられたし、後日、父母の諭はこの事を意味しているのだと気付いたのであった。
 そして2年前だったか、NHKの教養番組で「長寿の元サーチュイン遺伝子は、食事制限により活性化される」というのを見て、「少食多噛」が長寿と密接な関係を持っているという事を確信したのであった。飽食の現代人のサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)はほとんど休眠状態で、その結果老化が進行するとの事であった。
 その番組で、サルの集団を、食事のカロリーを3割制限した群と飽食させた群に分けて20年ほど飼育した実験によると、飽食させた方のサルの老化の進行速度は目を疑うほどであった。つまりこのサーチュイン遺伝子は、飢餓になると目覚めて、細胞中のミトコンドリアを活性化させ、活性酸素の害を防ぎ、さらに免疫低下、高血糖、脱毛白髪、骨粗鬆症などの老化現象を防ぐという事が立証されたのである。加えてこの遺伝子は、遺伝子損傷の修復能力もあるらしいのである。
 実験では、40%の減食が最もサーチュイン遺伝子が増加したが、現実的でないので、臨床実験では25%減でウィスコンシン大学にて人間を対象に進行中との事である。まさに益軒がいう「腹八分」なのである。補足であるが、この長寿遺伝子は飢餓やカロリー制限により活性化されるが、ポリフェノールの一種レスベラトロールでも活性化される。ポリフェノールを多く含むとされる赤ワインだが、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量では、人間の体重換算で一日にボトル100本飲まねば活性化されないので、赤ワインでの活性化は非現実的との事であった。
 遺伝子活性化物質の今後の研究の成果を期待したい。
 
    (顧問 野田 芳隆)

 

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