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わたしたちの主張
令和6年6月15日
「少子化対策の効果特に大都市では期待薄

 4月25日の全国保険医新聞(1面)によると、「少子化対策の『加速化プラン』に必要とされる3兆6000億円のうち、1兆1000億円は医療・介護の負担増、給付削減によって捻出」とあり、つい注視したくなるものです。
 まず2022年の合計特殊出生率が0・78と世界最低の韓国について考えてみましょう。韓国の場合、ソウル圏には韓国全体の人口の過半数が居住し、人口密度は東京都区部とほぼ同じくらい高くなっています。ソウル圏の次に東京圏が高く日本全体の28・8%です。ソウルや東京は高層マンションの建設により人口が一極集中、特に東京は低金利で高額な物件が多くなり、売り手市場だったと言えるでしょう。他方、SDGsの3つの都市はパリ18・2%、ロンドン13・4%、ニューヨーク7・4%と人口集中の割合は低く分散型です。
 ところで、韓国の出生率の低下はソウル圏への一極集中による高い住居価格と学習塾などの教育費負担が少子化の大きな要因と考えられています。韓国では、これまで出産費用や保育費の援助、児童手当に莫大な費用を拠出してきましたが、出生率の改善は見られません。高い給与指向のための高失業率の背景には、割高な不動産価格があるのです。これは東京にも当てはまります。元々、費用対効果は収入が低いほど効果的で、ソウルや東京の少子化対策は今後も期待薄です。
 次に、円安ドル高について考えてみましょう。円安ドル高の要因は米国の経済が好調でインフレ対策で金利が高いためです。一方、日本ではアベノミクスによるゼロ金利政策が続き国債発行も多くなっています。金利が上がると償還の際の利払いが増えます。利払いができなくなればデフォルトつまり国家財政の破綻です。また現在、労働力不足のために多くの外国人技能実習生が国内で働いています。円安が止まらなければ母国への仕送りが減り、今後の人材確保が難しくなり、人手不足に拍車がかかるでしょう。
 さて、東京23区の2023年のマンション平均価格は1億1483万円ですが、無理のない返済には、年収500万円なら2500万円、年収1000万円なら5000万円位の借入金が妥当と考えられています。そこで、借入金5000万円、借入利率1%、30年返済と仮定します。毎月の返済額は16万820円になりますが、借入利率2%なら18万4810円、借入利率3%なら21万803円と段階的に多くなり、金利上昇はボクシングのボディブローのように効いてきます。また、夫婦共働き正社員でないと億ションは買えません。2022年の賃金構造基本統計調査では39歳男性の年収は東京は約688万円、福岡は約535万円、佐賀は約484万円です。収入に合った不動産購入と仮定すると、住宅ローンは東京は3400万円、福岡は2700万円、佐賀は2400万円になります。無理のない借入金であれば養育費や教育費に余裕ができますが、東京は再開発がらみの高額マンションが多い傾向にあります。多額の借入金で余裕はなく、金利動向に注目です。
 最後に、都会の少子化対策は難しく、一方で費用対効果の面で地元佐賀県に合った有効な使われ方を期待しています。
(常任理事 田中 裕幸)

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