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わたしたちの主張
令和5年5月15日
「コロナ禍にみた、医薬品供給体制の脆弱さ」

 長引くコロナ禍で、私たち医療機関にはさまざまな課題が突き付けられた。その課題の1つに、医薬品の安定供給が挙げられる。発熱患者の増加や新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行の懸念等による需要が急増し、解熱鎮痛剤(一般名:アセトアミノフェン)が市場から枯渇した。これに伴い、解熱鎮痛剤の出荷調整が行われ、医療機関に十分な量が供給できない状況が長期間にわたり続いた。
 また、歯科医療機関においては、歯科用局所麻酔剤の記録的な不足にみまわれた。これは、新型コロナワクチンの製造過程で、歯科用局所麻酔剤を生産する際に必須の無菌フィルターを使用するため、ワクチンの増産が優先された結果、歯科用局所麻酔剤の生産に支障を来したためだった。加えて、世界的な注射製剤の製造資材不足による生産調整や、生産段階でのトラブル等による出荷停止が追い打ちをかけた。
 そもそも、この解熱鎮痛剤と局所麻酔剤は、歯科治療を行う上では必須のツールであり、「使用できない」=「治療できない」状況に陥る。多くの医療機関が、十分量の在庫を抱えていたとしても、発注から納品までに数カ月を要するといった由々しき状況が長期間続いた。
 今回のコロナ禍が、人類がまれにみる世界的パンデミックとはいえ、国は医薬品の安定供給体制の構築を図るべきだと強く考えさせられた。具体的には、医薬品の生産調整や出荷制限を行う場合には、その時期や期間などの見通しを詳細に公表していただきたい。また、その際の代替薬剤に関しての情報提供、周知徹底などを確実に行っていただきたい。
 そして、今回のように医薬品が不足するという非常時において、相応の効能があるものの、適応がないために使用できない薬剤を緊急的に適応拡大の措置の下、使用できるようにするなどの柔軟な対応を行っていただきたい。こうした点を、私たち「現場の声」として、関係各所へ届けたいと思う。 
(常任理事 梅津 健太郎)

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