佐賀県内には各地域に医師会が運営する看護学校があります。現在、全ての学校が学生の確保に苦労しているのが実情です。少子化に加え新しい看護大学が県内外に設立されたことが理由だと考えられています。さらに各医師会立看護学校の共通の悩みが、講義を担当する医師と実習を受け入れてくれる病院の確保です。若者の医師会立看護専門学校離れ、医師会員の看護教育に対する協力が得られにくいという厳しい現状の中で、それでもわれわれ開業医が看護師を育成することの意義について考えてみました。 4年制の看護大学で最新の看護理論や技術を学び、最高学府を卒業した若者のほぼ100%が全国の大病院に就職することは、容易に想像できます。看護大学を卒業してすぐに地元の診療所に就職する看護学生がほとんどいないのは当然です。診療所や地域の中小病院で働きながら、実地医療を体験しつつ看護師の資格を取得した医師会立看護学校の卒業生も設備や教育環境が整った大病院に就職したいという希望を持つのは同じでしょう。最先端の医療の現場で看護師としてのキャリアをスタートさせたいという気持ちはよく分かります。少子化や今の若者のニーズに合わないことを考えると、医師会立看護専門学校は不要論が出てくるのもうなずけます。 しかし、今回のわたしの主張は「それでも医師会立看護専門学校は絶対に必要だ」ということです。猛烈な速度で医療が進歩していく中で、わたしは看護師の役割は大きく変化すると予測しています。今30~40歳代の総合病院で働いている看護師さんの姿は、現在看護学校で学んでいる10~20歳代の学生さんたちの一般的な将来像とは大きく異なると思っています。つまり看護師さんの仕事は、今よりもはるかに重要で多様化し役割も細分化されていくので、医師会立看護専門学校卒業の学生さんの強みである現場で実践を体験しながら看護技術や知識を習得したことが有利になる分野、まさにわれわれ開業医とともに地域医療を支える重要な何か新しい分野も登場するはずです。大病院の中でコモディティ化した看護師ではない、新時代の地域医療を担う新しい若者が、胸を張って活躍できるような専門看護師を育成することが、われわれ開業医の重要な役目であるとわたしは主張します。 (理事 南里 正晴)
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