新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置付けが昨年5月から季節型インフルエンザなどと同様になりました。その対策は通常体制に移行されました。 新型コロナウイルス感染症は人獣共通の感染症です。コウモリと共生していたウイルスが、ヒトとコウモリの接触によりコウモリの中からヒトに伝播しました。ヒトに適応し、変異し、ヒトへの病原性を持つようになったと考えられています。 新型コロナウイルスは+(プラス)鎖RNAです。RNAウイルスは、DNAウイルスに比べて変異が起こりやすい。ウイルスの変異は遺伝情報が変異する現象です。2週間に1カ所程度の速度で変異しているといわれています。その結果、形成されるタンパク(スパイクタンパク)にも変異が起きることがあり感染力の強いウイルスも出現すると考えられています。 日本国内で最初に新型コロナウイルス感染症が確認されたのは2020年1月15日でした。今年で4年が経過しました。感染症対策は国によって異なっていました。日本では海外に比べ感染者数が低い水準に抑えられています。強制的な感染防御対策が取られた中国では、感染者数は日本よりさらに低い水準でした。新型コロナウイルスに対するワクチンは「ワープスピード」という速さでわずか1年足らずの短期間で作製され、世界中の人々に接種されました。20年以上前からのRNAウイルスに対するワクチンの研究があっての短期間での作製成功といわれています。このRNAワクチンの効果は驚異的な有効率です。わが国で感染症の拡がりが抑えられたのは1つはウイルスの変異株について日本人は交叉耐性があった、あるいは感受性が異なっていたのではないのか。2つは、マスク着用や手指消毒の手洗いなどの個人の習慣があり、伝染が抑えられた事が考えられます。さらに集団での飛沫感染を防ぐ対策が国民全体で守られた事などが伝染を収束できた理由と思われます。 人口増加や経済の発展の影響や気候変動の速さなどで野生動物の生息域が変化を受けています。ウイルスが家畜や人に近付いています。 人獣共通感染症は根絶できないし、今後も出現するだろうと考えられています。感染症防止のためには、次の2つが重要と思われます。 ①病原体に対するワクチン作製の技術の開発 ②感染経路を断つ体制を準備しておくこと 私たちの平時の備えが大事と考えます。
(理事 古賀 俊六)
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