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わたしたちの主張
令和元年8月15日
ひと昔前はオーラがあった オーラかだった
 団塊世代の私も「ひと昔前は…」を何とか語れる年齢になりました。
 「ひと昔前」とはアナログ時代のことでしょうか。デジタル時代では時の流れ、人の心、人間関係が一変したと思います。「のんびり」が「せかせか」に、「ほんわか」が「ぎすぎす」に、「すんなり」が「がたがた」に、「マイルド」が「ワイルド」に、と。
 ひと昔前は特に“センセイ”と呼ばれる人(医師、教師、弁護士、政治家)や“オヤジ”と呼ばれる父親にはオーラがあり、人情味があり、自ずと尊敬と畏敬の対象となり、周囲も彼らにはオーラかに対応していたように思います。
 ところが今はどうでしょう? 医師はモンスター・ペイシャントに悩まされ、医療保険制度は複雑化し、教師はモンスター・ペアレントで心身症を患い、いじめ対応に苦慮し、弁護士はしきりにコマーシャルを出し、政治家は失言・放言・暴言・スキャンダルの失態で選挙後にはタダのヒト以下になります。父親は“オヤジ”の威厳を忘れ、子供には“優しさ”だけで接し、マイホーム・パパになりきってしまっているようです。
 今や人はオーラを失くし、オーラかさを忘れ、「アナログ」の温もりが少なくなり、「デジタル」の冷たさだけが目立つ気がしてなりません。
 このことを歯科医療に充ててみましょう。
 ひと昔前は歯科も好かれる科ではないにしろ、何とかオーラはありました。41年前に開業した私自身には昔も今もオーラはありませんが、患者はオーラかに受診してくれましたし、何よりも医療保険制度がオーラかだったように思います。先輩たちは「昔はもっとオーラかだった。君たちは可哀そうだ」と言っていました。その言葉をそっくり私は今の若い後輩たちに送ります。
 デジタル化は歯科医療にも貢献していますが、設備投資も驚くほどアップしました。昔は開業資金もオーラかでしたが、今やその額に逆オーラを感じます。
 機器の修理にしても手作業で人情がこもっていました。今は基盤を変えるだけで「ハイ、どうぞ!」ですが高額料金と不人情さが不満です。診療報酬もすっかりオーラがなくなり、診療時間を長くすることで必死に補い、衛生士加算があっても衛生士は不足気味、技工士も不人気職種になって双方の不足は喫緊の課題です。歯科大や歯学部にも今やオーラはなく、定員割れの大学もあるやに聞きます。加えて国家試験の合格率は我々の頃は90%台でオーラかでしたが、今や60%台と厳しく、学生や親にとってのこの逆オーラは歯科にオーラがなくなっている原因の一つではないかとも思います。
 既にオーラがなくなっているのにも気付かず、周囲にもオーラかさが無くなりつつある今、アナログ時代の感覚で安易な言動を発し、軽率な行動・態度をとると、各種のハラスメントが待ち受けているのがデジタル時代の怖さであることを私も含めて“センセイ”は肝に命じなければなりませんね。
 (監事 上松 誠八郎)
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