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わたしたちの主張
令和3年9月15日
コロナ禍での高点数選定個別指導の運用について
 高点数を理由とした指導では、レセプトで県平均点数の1・2倍(病院は1・1倍)かつ類型区分ごとの上位8%で集団的個別指導に選定され、なおかつその翌年に平均点数が上位4%の医療機関が個別指導に選定されている。
 個別指導に選定された医療機関は、指導日の約1カ月前に実施通知が届き、指導当日の持参物の1つである診療録は、1週間前に20人、前日の午前に10人分の対象患者が指定される。診療後に診療録に付随する帳票類の準備作業も加わることもあり、指導日の前日はその準備が深夜に及ぶこともある。また、個別指導は平日昼間に行われるため、休診にせざるを得ない。
 個別指導は、「保険診療の取り扱い、診療報酬請求等に関する事項について周知徹底させること」として、懇切丁寧に実施することとされている。しかし懇切丁寧で教育的指導というより、いわゆる取り調べ室のようだと述べる被指導者も少なくない。被指導者にとっては避けて通りたいのが心情であり、高点数を気にするあまり、萎縮診療に陥っている医療機関もまれではない。
 昨年より、新型コロナウイルス感染症が全国的に猛威を振るい、感染を恐れる患者による医療機関への受診減少や、院内が密になることを避け、1日の来院患者数を制限せざるを得ない場合もある。また、訪問診療等の在宅医療に力を入れたり、高薬価の薬剤の処方も加わると高点数になることは避けられない。
 厚生労働省医療指導監査室は、令和3年度の個別指導の運用について、地方厚生局事務所へ事務連絡を発出した。高点数選定を理由とした指導については、『集団的個別指導は実施する(資料配布、動画配信でも可)。ただし、令和4年も引き続き高点数であった医療機関等に対して令和5年度における高点数を理由とする個別指導は実施しない』となった。要するに、令和5年までは、高点数を理由とした個別指導は行わないということである。
 現在の指導大綱は、1996年に新指導大綱として運用が開始され、この時より高点数での選定が始まった。この指導大綱は、これまでに一部の変更はあるが30年以上も現状での運用であり、時代にそぐわなくなっている。
 このコロナ禍での取り扱いを機に、高点数を理由とした個別指導は見直すべきではないだろうか。
 (副会長 新井 良一)
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