HOME » 協会新聞 » 2024年12月号 わたしの主張

 最近時々目にするPFASについて調べてみた。昨年12月にWHOの国際がん研究機関(IARC)が、PFASの中でPFOA(ペルフルオロオクタン酸)を最上位ランクの「発癌性は確実」と認定したと発表した。アスベストと同じ発癌性があるレベルであり、非常に強い発癌性があるとの証拠が出そろったことになる。
 PFASの汚染を除去するには活性炭が有効だが、日本で問題になった水道水のPFAS汚染はPFASを吸着除去した活性炭をビニール袋に入れて上水道の浄水場に放置したために、古くなったビニール袋が破れ水道水を汚染したものだった(岡山県吉備中央町)。
 全国で見つかるPFAS汚染の原因は①米軍や自衛隊の基地で使用する泡消化剤 ②有機フッ素関連工場 ③産業廃棄物 とされている。
 PFASの中でも特にPFOAとPFOSには強い発癌性ありとされており、この2つだけでも全国の200の自治体で使われてきたとされている。
 ところでPFASは水の汚染だけでなく生活のいろんな場面で使われている。例えばこびりつかないフラインパンでは鍋にフッ素系プラスチックが貼り付けてあり、金属ヘラでこするとそれがはがれ落ちて料理の中に混入してしまう。その他化粧品の中に、皮膚になじんで広がりやすいようにPFASが入っている。マスカラ、口紅、ファンデーション、日焼け止めに使われている。学生服、着物、デンタルフロス、塗料、ペンキ、スキー・スノーボードのワックス、ファストフードの容器、包装に用いられている。佐賀県では下水処理場の汚泥から作られた有機肥料から1㎏当たり66・3ugの、基準を超えるPFOAが検出されている。地下水汚染と土壌汚染は直ちに取り組むべき課題である。PFASが自然に無毒化するには数百年かかるとされている。
 ところでPFASの人への影響について、確実性の高いものとして、腎臓癌、精巣癌、甲状腺疾患、肝障害があり、中等度のものとして潰瘍性大腸炎を掲げている。胎児に対してはワクチン反応低下、低出生体重などがある。
 日本の規制基準は米国の10倍以上に緩い基準であり、今年1月に全国のPFASの調査では全て基準以下だったと発表したものの、緩い基準では疑いは消えない。
 今後は汚染源の特定と汚染者負担の原則に基づいた処置が望まれる。またPFASの毒性情報、健康影響の評価、汚染地住民への必要な医療、水道水の基準の厳格化が求められる。私たちは〝水俣〟を忘れてはならない。

(常任理事 山口 宏和)

※PFASとは
 有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、1万種類以上の物質があるとされています。(環境省HP)

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