長崎大学は、未成年者を含む学生や教職員はもとより、多くの人が集まる公共性の高い教育研究機関であることを踏まえ、喫煙による健康被害を防止し、学生、教職員および学内外の関係者の健康増進を図り、安心・安全、快適な教育研究環境を確保するため、また、学生に喫煙習慣を持たせることなく社会に送り出すため、全てのキャンパスにおいて敷地内全面禁煙することを宣言しました。この宣言を実行するため、全面禁煙までの移行期間を9ヵ月と定め、2019年8月1日をもって敷地内は完全に禁煙とし、休憩時間を含む勤務時間内喫煙を禁止すると決めています。
また今後、喫煙者を教職員として採用しない方針を明らかにし、面接の時にも喫煙するかどうかを改めて確認することにしているということです。喫煙者を教職員として採用しない方針を示したのは全国の大学の中で初めてだということで、こうした取り組みの結果、去年8月の時点での教職員の喫煙率は1割未満にとどまっているとのことです。河野茂学長は「全国的に自治体や企業でも禁煙の動きが進む中、学生を社会に輩出する教育機関として禁煙の取り組みは大学の務めだと考えている」と話され全く共感しました。
私は父親と身近な義理の兄をたばこによる肺がんで亡くし、大変残念でなりません。当然私はたばこを吸いませんし、兄弟も禁煙しています。思い起こせば私が医学部学生だった40数年前の頃は、多くの男性は教室内で堂々と喫煙していました。特に冬の教室内はたばこの煙で息苦しく、私がこっそり窓を開けると「寒い!誰か!窓を開けたのは!」と叱られていました。
非喫煙者に比べ、喫煙者が肺がんになるリスクは、男性で4・4倍、女性で2・8倍と高くなります。また、たばこを吸わなければ男性の肺がん患者の68%が発症せずに済むと考えられ、たばこががんのリスクを高める要因となっているとされています。たばこには「受動喫煙」による害もあり、受動喫煙による肺がん死亡のリスクは、受動喫煙の機会がない人と比べて、1・19倍になると報告されています。
肺がん予防で最も大切なのは禁煙です。禁煙をしてから10年たつと、肺がんのリスクが喫煙者と比べて約半分になります。また、禁煙は脳卒中・心筋梗塞・高血圧・動脈硬化・骨粗鬆症・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの予防にもつながります。今後この運動がさらに広がり、若い人が喫煙の呪縛より解放されれば、肺がんを含めもろもろのがんや生活習慣病は減少し、医療費の削減にもつながります。全国の大学に拡大されることを切に希望いたします。また、当然ながら、当院は禁煙外来も実施しています。
(常任理事 古賀 聖祥)
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