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わたしたちの主張
平成28年10月15日

幸福度とは?

 最近、ノーベル経済学賞を受賞したカーネマン博士の著書とウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカの2012年リオ会議での衝撃的なスピーチを読む機会があり「幸せとは?」という疑問に対して私なりに納得いく解答に出会えたような気がしたのでその一端を紹介したいと思います。  「人間は、収入に比例して幸せになるのか?」という疑問に対してのカーネマンの答えは「No」である。なぜなら、お金によって満たされるのは、あくまでも「生活満足度」だけで「幸福度ではない」というのです。この「生活満足度」は持続時間の短い感情的な満足で、家や車、食べ物などの消費で得られるが、すぐ飽きてしまうたぐいのものである。

 それに対し、「幸福度」は長期かつ安定的に心を満たしてくれるものであるという。つまり、「他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるもの」であり、例えば健康、社会への貢献、自由、愛情、良い環境などであって、経済学的に言えば「非地位財」といわれるものである。友人との絆、築き上げた家族、自分の人生の歴史からくる充実感など「金で買えないもの」なのである。

 それに対し、所得や社会的地位や物的財を「地位財」と呼び「他人との比較により満足を得るもの」と定義されている。人間の金銭欲や物欲は、より良いものやより豪華なものが目に入れば「満足度」は下がるが、人との絆や人生の充実は他人との比較では価値は揺るがない。収入でいえば平均よりかなり下の収入では衣食住に問題が生じ「幸福度」も低くなっていくが、ある一定度(日本人男性の平均所得511万円くらい)の収入があると基本的生活に支障がなくなり、それ以上の収入では「生活満足度」を引き上げるが「幸福度」はあまり変わらないというのである。収入が多ければ「便利」で「快適」になるかもしれないが、「幸せ」とは関係ない。がむしゃらに働いて出世して収入が増えたとしても「地位財」を増やすだけでその幸福は持続しないわけで、暖かな家族、信頼おける友人との時間 を持てている人が「非地位財」が増やされていくわけである。「貧乏子沢山」のほうが「仲間や友人の少ない独身貴族」より幸福度は高いといえるとのこと。

 世界一貧しい大統領ホセ・ムヒカは、先進国の首長を前に8分間の短いながらも衝撃的なスピーチをしたわけですが、「発展は幸福を阻害するものであってはいけない」「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです」「ハイパー消費が世界を壊しているにもかかわらず、われわれは消費をひたすら早く、多くしなくてはなりません。なぜなら消費が止まれば経済が麻痺するからです」「人類の幸福こそが環境の一番大切な要素である」などなど、その演説文はご一読に値する名文である。

 (顧問・常任理事 野田 芳隆)
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