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わたしたちの主張
令和3年12月15日
「えっ!?〝逆ザヤ〟って金パラだけじゃなかったの?」
 歯科では金パラの〝逆ザヤ〟問題が起こっています。補綴や修復で使用する金銀パラジウム合金(通称?金パラ)の市場価格が極端に保険償還価格を上回っています。幾度かの告示価格改定でも未だ〝焼け石に水〟状態です。
 そこで厚労省は窮余の策として、コンピュータ制御で作る CAD/CAM 冠なる固いハイブリッド冠の拡大導入と鋳造チタン冠の新規導入を図りました。CAD/CAM冠は〝逆ザヤ〟以前から審美的観点で小臼歯に限り導入はされていましたが、〝逆ザヤ〟後は大臼歯、前歯やブリッジにも条件付きで適用拡大してきました。歯と同色で元々自費の冠が保険で入ることに患者は歓迎していますし歯科医も多用しているものと思います。
 私見ではチタン冠導入には疑問を持ちます。チタン冠は金属冠で軽くて変色なしですが技工的にも臨床的にも鋳造法や固過ぎで取り扱いにくい金属です。勿論、欠点を工夫克服して既に採用している所もあるでしょうが…。
 他方、CAD/CAM 冠も審美的にはまずまずでしょうが歯の削合量の多さは歯にはマイナスですし、耐久性では金属には及ばぬという臨床的ハンディもあり、壊れると2年間の補綴管理義務との兼ね合いもありトラブルの不安も残ります。ともあれ金パラの出番はまだまだ続くはずです。
 その他、補綴では義歯の保険償還価格は患者さえも驚く程の低さで、技工所にもシワ寄せが及んで同情するくらいの低い技工料を強いられています。これまた積年の隠れた〝逆ザヤ〟です。
 今や歯科界(臨床・技工)は機器のコンピュータ化、材料の高騰などにより設備投資も多大になり、悲鳴を上げている所も少なくないと思います。加えてこのコロナ禍での患者数減少や感染予防対策費用もこれまで以上です。引きかえ診療報酬は追いついてはいません。謂わば診療報酬全般が〝逆ザヤ〟とも言えるでしょう。自費診療に活路を見出そうとするのも無理からぬことですが、あまり無理すると患者の反感を買うことにもなります。と言って自費診療の〝うま味〟も傍から見る程ではありません。歯科界の低迷は歯学生やコ・デンタル学生の募集定員割れ・質の低下にも繋がりかねませんし、事実耳にもします。将来の由々しき問題でもあります。
 金パラのみならず歯科保険診療報酬全般の〝逆ザヤ〟に目を向け、厚労省や世間にも訴え、歯科界自体も自助努力をし、金パラ問題をきっかけに歯科界のパラ(ダイス)化を図りましょう。
 (監事 上松 誠八郎)
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