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わたしたちの主張
令和5年7月15日
「消費税は社会保障のためだけに充てられたのでしょうか?」

1989年(平成元年)4月に初めて消費税3%が導入されてから、1997年(平成9年)4月に5%、2014年(平成26年)4月に8%となり2019年(令和元年)10月に10%と増税されてきました。その度に政府の見解として「消費税は社会保障のためだけに充てられるものです」といかにも目的税であるがごとく国民に説明してきましたが、果たしてそうだったのでしょうか?
 毎年12月に発表される次年度の予算案を見てみると、一般会計の歳入総額106・6兆円(2021年度分)の中に消費税19%(20・3兆円)、所得税17・5%(18・7兆円)、法人税8・4%(9兆円)公債費40・9%(43・6兆円)などと、目的税ではなく、しっかりと一般財源の歳入項目として記載されています。消費税導入前と10%になった2020年度の比較(厚労省資料から元静岡大学教授の湖東京至税理士作成)では健保本人負担は1割から3割になり、高齢者の窓口負担定額800円から所得に応じて1~3割負担になり、国保保険料も1人平均5万6372円から9万233円になり、国民年金保険料も月額7700円から1万6610円となり、また65歳以上の介護保険料も0円から5869円となっています。このように社会保障給付を支えているのは消費税ではなく、主要財源は歳入の約4割を占める国債と国民が負担している社会保険料、年金保険料、介護保険料などに支えられている(湖東元静岡大学教授)とのことです。
 2022年(令和4年)度の消費税増収分(増収額計14・3兆円)の使途として、
1)基礎年金国庫負担割合2分の1:3・5兆円
2)社会保障充実:4・01兆円
 その中に幼児保育無償化、子ども・子育て支援、医療介護保険制度改革、難病疾患特定疾患への対応、年金生活者支援給付金等全てを含む
3)消費税率引き上げに伴う社会保障4経費の増加:0・63兆円
 4経費とは、医療、介護、年金、子ども・子育て支援
4)後代への負担の付け回しの軽減として:5・8兆円
 このように消費税増収分は14兆円あるのに、社会保障の充実に充てたのは合計で4兆円のみで、かつ社会保障4経費たる医療、介護、年金、子ども・子育て支援等には計0・63兆円しか使われていないのです。なぜ消費税増収分の全額が「社会保障の充実」でないのか、診療報酬がここ10年間上がらないのはなぜなのか等の疑問に政府は答えてほしいものです。
 従業員の給料を上げることはおろか物価高、医療機器代、レセプトや電子カルテなどへの対応等々、どの医療機関も資金繰りに悩んでいる昨今であります。
  (顧問 野田 芳隆)

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