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わたしたちの主張
平成29年12月15日
「森友・加計疑惑」について

 行政が時の権力者によりゆがめられ、国政が私物化されたのではないかという重大疑惑だ。大阪府豊中市の国有地が、学校法人森友学園に、根拠があやふやでずさんな手続で8億2000万円もの値引きで払い下げられていたことが、会計検査院の調査で分かった。先の国会で法令に基づき適正な価格で処分したという政府の見解と全く異なっていた。大阪航空局のごみの撤去費用の算定に十分な根拠が確認できなかったり、近畿財務局は、評価に必要な「評価調書」を作成せず、鑑定評価額と大きく異なる額を予定価格としていた。
 壁になったのは、財務省や国土交通省が関連文書を破棄していたことだ。検査院はそのため会計経理の妥当性について十分に検証を行えない状況で、「評価事務の適正を欠いている」と指摘し文書管理の改善を求めたとのこと。学園の籠池理事長が、「神風が吹いた」というほど特例づくしだった。建設予定の小学校名誉校長に安倍首相の妻明恵夫人が着任した時期と重なっていたことが背景にあるが、首相は「私や妻は国有地の払い下げには一切関与していない」と強調している。今年の流行語大賞「忖度」という言葉がよく使われるようになったのは森友疑惑からである。「忖度」はなかったか。首相はこの時携わった財務省近畿財務局長を国税局長官として栄転させている。まったくおかしいことだ。
 同じようなことが「加計学園疑惑」でも起きている。この核心は、加計学園理事長の親友である安倍首相の関与により、獣医学部の新設に特別な便宜が図られたのではないかという点である。前川前事務次官は「行政が曲げられた」と証言しているほどだ。文部科学省の構図は「森友学園」と全く同じである。学部新設にあたっては、「官邸の最高レベルが言っている」とか内閣府が「総理のご意向」として開学を促したとされる文科省の内部文書が発覚した。圧力として働いたのは紛れもない事実であろう。小生の記憶ではこれらの文書は当初は見当たらないとされていたが、催促されやっと出てきたのではなかったか。また一民間人である加計理事長がもろもろの担当大臣と相次いで面会し新設の話をしているが、安倍首相の名をかたって「忖度」を働きかけていなかったか。この点でも、真相究明に明恵夫人および加計氏の国会招致は必要ではないか。
 しかし安倍首相はこれらの疑惑について「その都度丁重に説明してきた」と答弁。また関係者の国会招致は国会で決めることとし、結局両者の国会招致はできなかった。一方では安倍内閣は野党の国会質問時間を短縮させるという手段まで弄し追及を逃げている。
 私は今回の追及で問題なのは、公文書を自分たちに都合が悪いと容易に破棄し問題の本質に迫れなかったという事。これではまともな議論はできず、国民に対してまっとうな説明責任が果たせないのではないか。「安倍内閣、国民を馬鹿にするのはほどほどにせよ」と言いたい。
 ある学者は、戦後日本の経済回復が遅れたのは、軍人などが戦犯を恐れ終戦時に大量の公文書を焼却したのが大きな原因の一つだと述べてあった。それほど公文書は一国の政治経済や政府の監視に非常な影響力を持つものと今回しみじみ思った。遅まきながら安倍首相は公文書管理の徹底のため行政文書管理ガイドラインの改正を年内にと表明した。くれぐれもざる法にならないように願う。
(常任理事 古賀 聖祥)

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