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わたしたちの主張
令和2年2月15日
今更聞けない性感染症!
 「今更聞けない性感染症」というタイトルに惹かれ、初めて日本性感染症学会に参加しました。常識なのかもしれませんが泌尿器科医の私が知らないことばかりでした。
 今回は「性感染症のいま」を主張します。
 まず、今梅毒感染者が国内で急増していることが話題になっています。男性だけでなく女性の感染者も増えています。その理由は海外、特にアジアからの旅行者が日本の風俗産業を利用したことで持ち込まれたものと理解していました。ところが遺伝子検査や流行の時期など総合的に判断すると、現在の梅毒は日本国内で広がった可能性が高いそうです。SNSの発達で本来出会うはずがなかった人たちが出会うことで広がったと考えるべきだということでした。
 次に衝撃を受けたのは尿道炎の起因菌のひとつである「マイコプラズマ・ジェニタリウム」でした。これはご存じない方もいるかもしれません。私も気にしていませんでしたが性感染症のひとつです。問題なのはこの感染症は保険病名がないこと、そのため検出方法はあるにもかかわらず、保険請求できないのです。さらに耐性化がどんどん進んでいるそうです。私たちは尿道炎の「マイコプラズマ・ジェニタリウム」を治りにくい尿道炎と思い込んで抗菌剤をダラダラと使っているのかもしれません。
 そしてHPVワクチンの話も衝撃的でした。泌尿器科医は尖圭コンジローマの治療をすることがありますが、コンジローマはヒトパピローマウイルスが原因です。HPVワクチン接種が推奨されている国では尖圭コンジローマに罹患する人がほとんどいないため、現在は国際的に治療薬の新規開発がないそうです。尖圭コンジローマの治療で四苦八苦しているのは日本だけなのかもしれません。
 HPVワクチンに関しては子宮頸がんもヒトパピローマウイルス感染が原因なので、本学会でもたくさん取り上げられていました。HPVワクチンを女児に接種することは国や自治体が以前は推奨していましたが、現在は取り下げられています。その副作用が理由ということは新聞やテレビの報道で理解しているつもりでした。いや、正直に言うと私にとってこの問題は対岸の火事で、全く関心がありませんでした。これが大きな間違いだということをこの学会で思い知りました。全ての家庭医がこの問題にもっと関心を持つべきです。
 理由は割愛しますが、主張したいことはマスコミや一部の専門家の発信する情報だけで分かったつもりにならず、かかりつけ医はHPVワクチンを受けることの重要性や副作用の何が問題なのかをしっかりと勉強して、正しい情報を親や女児に説明する責任があると思いました。
 HPVワクチン問題の本質を知らなかったことを強く反省すると同時に、私たち開業医はもっと婦人科の先生にこの問題が何なのかを学ぶべきだと主張します。
  (理事 南里 正晴)
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