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わたしたちの主張
平成27年11月15日

地域包括ケアシステム

 2025年は戦後生まれの団塊の世代が全て後期高齢者となる年である。75歳以上の高齢者が18.1%、2179万人になるとされており、認知症の人は700万人前後になるとされている。その時を迎える前に医療と介護の準備は必要である。

 しかし、医療費と介護費の過剰になる方向からのみ、つまり経済面を中心にして決まった2015年の社会保障制度改革プログラム法、そしてプログラム法を受けての2014年の医療介護総合法は大きな問題を抱えており、その内容の実施となる2017年までの間の地域包括ケアシステムの具体化に積極的に患者住民のための関与が必要とされる。

 本来医療・介護の費用を削減するためのこれらの施策は、川上の改革と言われる入院病棟の削減と、退院を強いられた医療ニーズの多く残った患者を受容するための地域での対策という川下の改革がセットになっている。

 川下の改革の中心理念が「地域の実情に応じて、高齢者が可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まいおよび自立した日常生活の支援が包括的に確保される」ということであり、地域包括ケアシステムの理念である。ここで問題になるのは全ての地域住民が必要とするサービスを受けられるかどうかである。

 政府・厚労省の狙いは、地域包括ケアシステムの名の下での給付抑制、自助、互助、営利市場化である。公的な医療・介護への給付抑制は、自治体による医療・介護力の違いや、患者・利用者の経済状態の違い、地域の環境の違いなどによる格差を増大させる。

 2015年の介護保険法の「改正」では、「包括的支援事業」として①在宅医療・介護連携の推進、②認知症施策の推進、③生活支援サービスの体制整備、④地域ケア会議の推進を位置付け、地域包括支援センターはこれらの事業と連携し、地域の実情にあった地域包括ケアシステムを作ることを目指している。

 こういった制度を利用するためには高齢者の実態がどのようであるかを把握することが必要である。

 東京の港区では一人暮らしの高齢者と75歳以上の高齢者を含む二人世帯の悉皆調査(月刊保団連10月号)を実施している。

 一人暮らし世帯の年間収入150万未満の世帯は37%、75歳以上の高齢者を含む二人世帯の年間収入250万円未満の世帯は30.3%であった。

 港区では2012年からふれあい相談員事業を実施し、一人暮らしの高齢者と複数の高齢者のみの世帯を前者で約3500人、後者で約1500世帯3000人をリストアップし、11人の相談員が訪問した。一人暮らしの高齢者は3472人(94.1%)に面会できている。高齢者サービスや介護保険サービスにつなげた件数は1904件である。

 この港区のケースのように一人も漏らさない悉皆での、老後を安心して過ごせるような施策が必要である。

 また介護保険制度の発端となった広島の御調町のケースのように自治体が医療機関と共に必要な医療・介護・生活支援を行った事例もあり、地域包括ケアが真に住民、患者のためになるように医師・歯科医師他多くの職種、自治体が協力して作り上げるべきである。

 (常任理事 山口 宏和)

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