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わたしたちの主張
平成26年9月15日

カジノが成長戦略とは?

「カジノを中心とした統合型観光施設(IR)が成長戦略の目玉だ」として、秋の臨時国会で成立する公算が大となった。IRはカジノ収益で会場や宿泊、飲食各種娯楽を格安で提供するため、刑法でギャンブル(賭博)の合法化を大前提とする。

 カジノ推進法はIRについて、シンガポールの例を引き合いに出して、カジノが開業した2010年からの4年間で海外からの入国者数は6割、観光収入は8割増加したことを挙げ、「地域経済にもたらす影響は決して無視できるものではなく、その経済的波及効果は大きい」とし、まさに「カジノさまさま」の形相を呈していると語った。

 また日本には、競輪、競馬、競艇などの公営ギャンブルやパチンコがこれだけあるのに、なぜ世界120カ国以上で合法化されているカジノは駄目なのか。その事自体がおかしいと言い切る人もいる。

 一方、ギャンブル依存症を見てきたある精神科医は、その体験より暗黒の部分を明らかにした。男女比9:1で、20歳前後でギャンブルを始めている。大多数はまず家庭で盗みを働き、その後いろんなものに手を付ける。借金と嘘を重ね、家族を精神的な病気に追い込む事もある。こうした問題の中のカジノである。しかしカジノは、パチンコ以上にギャンブル中毒者を生み出す。このギャンブル中毒者は労働意欲を喪失させ、失業・家庭崩壊・病気・犯罪を通じて大きな負担と犠牲を社会にもたらす。最近、樋口進久里浜医療センター院長は「国内では536万人の依存症がいる」と推計した。

 確かに「アジアの富裕層が客の中心だから心配ない」や、依存症対策や地域の安全強化など「管理を徹底すれば大丈夫」とも言う。これは厳格な歯止めによる容認である。本当に大丈夫なのか…。かつては自民党代議士の故浜田幸一氏(ハマコー)や最近では某製紙会社の御曹司もカジノで巨額のお金をスッたとの報道もあった。

 このように、カジノの収益は、客の負け金に他ならない。米国では、カジノの繁栄は周辺地域の既存地域の商店街や宿泊業などに大きな被害を与えているとのこと。すでにカジノ飽和状態の米国では収益がピーク時から半減し、今年だけでも3分の1のカジノが閉鎖するとのこと。また韓国と台湾でもIR計画が先行し、東京オリンピック時には特にアジアのカジノ市場は飽和状態になると思われる。まさにお客の奪い合いである。わが国の既存の地方競馬の廃止や競輪、競艇など衰退に拍車がかかる可能性が大である。

 東京オリンピックの誘致の際は「お・も・て・な・し」を全面に出して見事開催国に選ばれたが、あの熱意はどこに行ったのか。また、日本食も世界遺産に選ばれた。

 海外では何かあるとすぐ暴動・略奪が起こるが、日本は東日本大震災の時も略奪や暴動も起こらず平静で、外国のメディアからも称賛の眼差しで高い評価を得た民族でもある。もっと平和で安心・安全なものはないか、さらに知恵を絞るべきと考える。

 私はカジノを地域活性化の切り札とすることに強く違和感を感じてならない。人々に喜びや感動を感じてもらえる心のこもった温かみのあるサービスに知恵を絞り、役立つ製品をコツコツ作って商売をするのを正道とすると、浅ましく邪道としか思えない。アベノミクスがアベコベノミクスに思えてならない。

(常任理事 古賀 聖祥)

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