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わたしたちの主張
平成25年12月15日

モッタイナイの心

 先日、パソコンが買い替え(死)を宣告された。「モッタイナイの心」で修理名人(名医)に診てもらったら、驚くかな完治した。おかげで新品の十分の一の出費で済んだ。「モッタイナイの心」さま様だ。
 数年前にケニアのノーベル平和賞の環境活動家マータイ女史が日本の「モッタイナイの心」を全世界に紹介した。外国語には的確な単語がなく、今や「mottainai」で世界中を飛び交っている。しかし、いわばお家元の日本ではその心が忘れかけられているようだ。修理よりも買い替え、古い物よりも新品、食べ物の粗末化、モノの使い捨て(ブラック企業はヒトも使い捨て)が、常態化している。衣類にツギをあててくれた母親、動かぬ器材を使えるまでに頑張ってくれた業者、些細な故障にも出向いてくれた近所の販売店、…と昔は心も暖かかった、「ハイ、捨てようネ」、「ハイ、基盤交換しときますネ」、「ハイ、新品がお得ですヨ」…と今は心底冷たい、と女史は日本の世も末と嘆こうぞ。
 ところで福岡の知人に九代六百年続く先祖伝来の古式豊かな・室礼の道具・を守り継ぎ、なおかつ一般に公開すべく私費と自力でギャラリー開設に邁進している親子がいる。国宝級、重要文化財級とも聞く。二人は福岡県の片田舎の家系千年、千坪の庄屋造りだがここ30年間無人で放置された古民家を「モッタイナイの心」で当主(医者)から数年前に譲り受けた。そこには地域の守り神たる・庚申さま・が敷地内に祀ってあるのも選んだ理由の一つだった。荒廃の程度と昨年の水害には転居を考えるほどに、二人の心は折れかかった。しかし懸命の努力で家屋と庭はこの秋に蘇り、地域の人たちを招待できるまでになった。二人の再興に対しこのお屋敷への畏敬の念を持つご老人は涙したとか。きっとこの荒れたお屋敷を「モッタイナイの心」で長年見守ってあったのだろう。この頃では・庚申さま・にはお賽銭もあがっているそうな。古い物を大切にする心、伝統を守ろうとする信念、現代の人にももっと公開したいと思う情熱に私の人生で久々に心動かされた二人である。
 もう一つ別の話だが私の信奉する日本のジャズ・アルトサックスプレーヤの愛用サックスはたまたま骨董店で見つけたU字管の潰れた1960年代のアメリカ製の代物だそうで「モッタイナイの心」が堀り出した宝だ。
 世の移つろいの余りの速さに「じぇじぇじぇ」と驚いてばかりいないで、「モッタイナイの心」を発揮するのは「今でしょ!」さもないと後世には「倍返し」でとばっちりが返って来ますヨ。「お・も・て・な・し」の心も2020年の東京オリンピックを待たず、今からでも日本人の心の代表として「o.mo.te.na.si」で「mottainai」と一緒に世界外交の一助を担ってもらいたい。そして来年からは世界中が物心両面で平和かつ豊かになりますように。
 (監事 上松 誠八郎)

 

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