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わたしたちの主張
平成25年10月15日

福島原発事故収束せず

 10月4日付新聞各紙は、放射能漏水の外洋流出と貯留タンクの傾きを報道した。汚染水保管タンクの総容量は34万7千トンであり、既に33万2千トンが保管されている。残りは1万5千トンしかなく、原子炉建屋に注入する地下水は1日当り4百トンあり、これが新たな汚染水となっている。そのまま保管タンクを占拠することになれば、単純計算で、37・5日で満タンになる。
 東電が現在、鋼鉄製の部材をボルトで締めただけのフランジ型タンクであればタンク群一ヶ所を2ヶ月で作ることができるが、漏えいが起きにくい接合部を溶接したタイプだと半年が必要となる。
 福島第一原発の放射能汚染水は核燃料を冷却するために使った水であるが、これをセシウムや塩分を分離して再び原子炉に注入しているため、注入水の全てが貯留タンクに貯められるわけではない。しかし残ったストロンチウムなどは貯留タンクに貯められている。汚染水処理の切り札とされる多核種除去設備は9月下旬に試運転を再開したが、設備内のゴム製シートに邪魔されて停止せざるを得なかったという。
 ところで、安倍首相がオリンピック東京誘致に際して、福島原発の放射能はキチンとコントロールされていると発言したことは耳新しい。8月の汚染水3百トンの漏れといい、今回のタンクの傾きによる漏れといい、全くコントロールされているとは言い難い。政府が放射能管理を徹底すると決定したり、金を出すと決めたりするだけでは収束しようがないのが現状だ。
 政府が東電の尻を叩くだけでなく、自ら乗り出して、国民の安全のため、世界の安心のため、責任を持って対応することを望む。東電一企業が金の心配をしながら、単純ミスを幾つもおかしつつ、対応が後手後手になるのを恐れる。福島原発事故の収束のため政府が一丸となって、世界の対策技術の全てを集めて、責任を持って施策を実行すべきである。
 接合部溶接タイプのタンク群増設や、4百トンの地下水の流入の防止や、汚染水の多核種を取り出して注入水に再利用する設備の早期稼働や、復興財源を効果的に早く使って、15万人といわれる原発事故による避難者の住居や生活再建など、政府が本腰を入れて取り組まなければ目的を達成できないと考える。

 (常任理事 山口 宏和)

 

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