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わたしたちの主張
令和5年10月15日
「医療用AIについて考えたこと」

 数カ月前にChatGPT -言わずと知れた人間のようにテキストベースで会話ができる人工知能(AI)- をインストールした。ところが日常の仕事にどのように役立てるのか見当が付かず、そのまま放置していた。
 先日、自分が急性胃腸炎と思われる症状を発症した時に、試しにChatGPTにカルテに記載するように自分の経過と検査所見を入力してみた。するとChatGPTは診断と治療方法、生活上の注意、そして医師の診断を受けるタイミングなど見事に解説してくれた。もちろん最後には「ChatGPTには正式な診断をつけることができない」という注意書きも丁寧に書いてあった。
 面白くなってChatGPTの能力を試すために、私の専門である泌尿器科領域で診断が難しいとされている疾患について質問してみたところ、残念なことにその回答は頼りなかった。まだまだ発展途上であるがそれでもAIの進化の速さはすさまじい。先日、内科の先生から胸部レントゲン検査の読影にAIを利用しているという話を聞いたし、泌尿器科領域でも最近の学会賞がAIによる膀胱鏡診断であったことからも、AIが近い将来われわれの日常診療の中に大きく関わってくることは間違いないだろう。
 先日、東京都内で某製薬メーカー主催の講演会の特別講演がAIを利用した先端医療についての話であった。演者は東京大学医学部を卒業し数年間臨床医をした後に医者を辞めて、スタートアップ企業を立ち上げた秀才だった。講演会が終わった後にその演者と直接話をする機会を得た。彼の話によると最近では東京大学医学部卒業生のうち、ひと学年で5~10人程度が医師を辞めて医療に関連したAI関連のスタートアップ企業を立ち上げているとのことだった。今から10年前に発売された京都大学客員教授が書いた本に、著者が京大生を相手に起業論の講座を開設したところ、受講生で最も多かったのは医学部の学生だったと書いてあったことを思い出した。日本の秀才たちが会社を作って医療AIの開発を進めているのが現実なのだ。
 われわれの世代はもちろんのこと、先輩医師たちも無機質なAIが日常診療の中にドカドカと立ち入ってくることに拒否感があるかもしれない。ただ医療用AIが現時点では完璧ではないため、もうしばらくは今の医療技術や知識で日常診療は可能だろう。しかし現在の医学生や研修医たちが専門医になる頃にはAI無しでの医療はあり得なくなっている可能性が高いと思う。そうなると時代の変化の中にいるわれわれはAIを拒否するのではなく、有効な活用方法を模索すると同時に、AIにできない技術を磨いていくしかないと言える。
 ChatGPTなどのAIを新しもの好きの娯楽品と思わずに、ぜひインストールしてその能力と利用方法を試してみるべきだ、ということが今回の私の主張である。
  (理事 南里 正晴)

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