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わたしたちの主張
令和5年12月15日
「薬が足りない」

 薬が不足しているのは、さまざまな要因の重なりが考えられるが主な原因としては、以下のようなものが挙げられる。
 ①発端は後発医薬品メーカーの小林化工に始まり、沢井製薬等の大手ジェネリックメーカーのデータ改ざんや製造不良、品質管理の不備、薬品事故などの不正が次々に発覚。業務停止や出荷停止の処分が相次ぎ、国内で使用される医薬品の8割ほどを占める多くのジェネリック医薬品が直接市場から消えることで、供給がひっ迫したことがその原因として最も大きな影響を与えている。一方でジェネリック医薬品は、医療費抑制にも貢献している。
 ②原薬の調達や品質管理に関するトラブル。新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢などで、生産国や輸送ルートが不安定。品質管理に関するトラブルも薬不足の要因。驚くなかれ、原薬調達の不明な国もあるとの事。これらのトラブルにより、原薬の入手が困難になったり、品質に問題がある医薬品が回収されたりすることで医薬品の製造遅延がある。
 ③需要の急増や予測の困難さ。例えば、新型コロナウイルスや季節性のインフルエンザの感染症や花粉症などのアレルギー性疾患に関連する薬の需要に伴って、限定された薬の需要は急増したり、また変動もしやすく、予測が困難。これらの需要の変化に対応するためには、各業種間の関係者が連携して、適切な在庫管理や需要予測を行う必要があるが、できていない。
 ④製薬業界の低収益化や競争の激化。ジェネリック医薬品の普及により、医薬品の価格が下がり、低収益化や国内外の競争が激化している。メーカーは研究開発や設備投資に多くのコストをかける必要があり、利益率の高い新薬や特定の領域に注力し、利益率の低い多品目少量の医薬品の生産を縮小したり、撤退したりするためだ。
 ⑤国は、医薬品の安定供給に関する法律を2020年に施行したが、薬不足や多品目少量の医薬品の生産に対する補助金や優遇措置などのインセンティブを設けず対策も不十分。この打開策として厚生労働省は安定供給に貢献する製薬会社の薬価を優遇する方針だ。高い評価を得た企業の製品の薬価を評価の低い企業の製品よりも高めに設定し、24年度から実施するとの事。また安定供給に貢献しない企業の参入を抑制し、品目数の膨張にも歯止めをかけたい考えだ。しかし企業数が増えれば、薬価を下げる制度も検討するとの事。メーカーの法令順守の体制にも問題があり、外部からの定期的査察も必要かもしれない。 以上のように、多くの要因が複雑に絡み合い薬が足りない原因として考えられる。何はともあれ、より早くわれわれおよび患者さんに薬を届けてほしい。

(常任理事 古賀 聖祥)

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