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わたしたちの主張
令和4年8月15日
「もう1つの医療崩壊」
 新型コロナ流行も第7波に突入し、佐賀県も1日の感染確認人数が2000人に届く勢いで推移している。政府は経済を回す事を優先し、一方で医療崩壊を防ぐとは言っているが、その特別な具体策は示されていない。しかも、目を向けている医療崩壊は、コロナ感染の重症者に対する入院治療(ベッドの確保)に対するもので、そこで働くスタッフの確保については問題とされていないように思われる。
 経済を回すためには、感染者の増加には目をつぶり、重症化しなければ良い、果たしてそれで良いのであろうか。 感染者の増加が、結果的に経済の流れを止めてしまう事につながるのではないかとも思う。感染の拡大により、医療従事者の家族が感染すれば、当然家族は濃厚接触者となり、今のウイルスの感染力からするとおそらく家族全員の感染につながり、10日間の自宅療養を余儀なくされる。医療機関ではスタッフ不足が起こり、スタッフの多い大病院でも夜勤を組むことが難しくなり、スタッフの少ない医科・歯科診療所では、即日常の診療に影響が出る事になる。複数名が同時に感染すれば一時休院を余儀なくされる事も考えられる。
 また、休日当番医もしかりで、急にスタッフ不足になると、当番医の対応すらできなくなる。交代してもらえる医療機関が見つからなければ、開院している当番医療機関に負担をかける事になるであろう。医療におけるもう1つの医療崩壊である。自宅療養期間の短縮も言われ始めているが、医学的にエビデンスのある対策をお願いしたい。短期間で職場復帰できても、そこでクラスターが発生しては本末転倒である。
 新型コロナ感染症をインフルエンザ並みの取り扱いにという意見も出てきている。そろそろ議論し始めるのは悪くないと思うが、私はまだ時期尚早ではないかと思っている。インフルエンザのように、誰にでも処方できる著効を示す抗ウイルス薬がないからである。確かに、若い人たちは重症化せずに短期間で治っていくが、その周りには多くの重症化リスクを持った人たちがいる事に目を向けてほしいものである。
 極論を言わせてもらうと、コロナ病棟での患者対応が、インフルエンザで入院した人と同じように、防護衣不要で対応できる状況になってからでも良いのではないか。コロナ病棟にいるウイルスも市中に広まっているウイルスも密度こそ違え同じウイルスなのである。2類・5類の取り扱いにこだわらず、もともと特例扱いしているのであるから、部分的に徐々に5類に近づけても良いのではないかと思う。
 経済を回す事が重要であるのは理解できるが、医療についても両目を見開いて対策を立ててほしいものである。政府やマスコミが、経済も医療も大企業(大病院・コロナ入院対応病院)の方向しか向いていない事を本当に残念に思う。    

  (佐賀市 なしか医)

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