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わたしたちの主張
平成26年4月15日

在宅医療推進の本当の狙い

 2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、医療・介護の必要量が一気に増大することになるが、もちろんそれは医療費も介護費も一気に増大するということでもある。さらには年金受給者も、また生活保護費用も増大するであろうから、増大する社会保障費をいかに抑制するかという政府として頭の痛い悩ましい問題が近未来に差し迫っていることになる。
 ところで介護費用は要介護度によってその利用上限額が定められており、それ以上必要であれば本人(家族)の手出しとなる、つまり医療で言うところの混合診療が当たり前に認められているのである。もちろん手出しできる余裕ある家庭は限られているために、十分満足いく介護が受けられる人は限られており、多くの要介護者は我慢を強いられた状態での生活である。
 周知のごとく医療は出来高払いであるから、介護保険のような利用上限が存在しない。入院患者さんが亡くなる前の一カ月間の医療費は、平均で100万円を超える額である。在宅で患者さんを診ると入院料の保険請求がなくなるわけであるから、これだけでも50パーセント近い医療費削減が可能となる。在宅において手厚い医療が行われたとしても入院における医療費を超えることはないので、在宅医療は医療費削減にはかなりの効果が期待されるわけであるが、在宅医療における訪問診療料の削減が、さらなる医療費削減には効果が大きい。
 一部の業者による患者斡旋のキックバック等の不適切例を理由に、同一建物居住者における訪問診療料の大幅な削減が行われたのは、医療費削減に利用されたのであろう。今後は特定看護師等による処置などがドンドン在宅医療の場に導入され、医療費の削減のために医師の必要度を削減していくものと思われる。
 「患者さんは住み慣れた在宅で終末期医療を迎えることを望んでいる」という厚労省の宣伝文句は本当なのか。医療費削減に利用しているだけではないのか。「病院完結型から地域完結型」の安上がりな医療供給体制に手を貸している矛盾を感じながら、在宅医療をゆっくりと進めていく私であります。
 さて高額療養費の現物給付化が外来患者にも適用されます。在宅でも、外来同様に、高額療養費はかなり優遇された金額ですから、介護保険に比べて非常に利用しやすいものと思います。ちなみに高齢受給者の一般所得区分の外来における自己負担限度額は1万2千円ですから、在宅で必要と思われる医療は患者さんのために遠慮なくドンドン行っていただきたいと思います。
  (会長 藤戸 好典)

 

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