点字ブロックは昭和40年に三宅精一氏によって考案され、昭和42年3月18日、世界で初めて日本に敷設された。点字ブロックが敷設されてから50年以上たったわけだが、世間での点字ブロックに対する理解は進んでいないのではないかと、たまに思う。
以前私は歩道から、ふらふらと車道に出て歩こうとされる高齢の女性を見かけた。心配になり声を掛けると、目が不自由であることが分かり、しばらく一緒に歩くことにした。お話をしていると、「かすかに目が見える」「点字ブロックの『黄色』を頼りに歩いている」「点字ブロックがあっても『黄色』でないところは、ブロックのデコボコを頼りに歩いているが、見失いやすい」等が分かった。私が声を掛けたのは、まさに、女性が点字ブロックを見失っていた時だった。
女性は私に「周りの人に目が悪いと思われたくなくて、ちゃんと歩いているつもりだったのに、あなたには分かったのですね。私は駄目だな」と言った。私が声を掛けたことにより、女性を傷付けてしまったのだ。その後、黄色い点字ブロックのところに着くと、「ここまで来たら大丈夫です」と力強く歩いて行かれた。きっと、全ての点字ブロックが黄色であったら、女性がブロックを見失うことも、私が声を掛けることも、私が女性を傷付けてしまうこともなかったのだろう、と思った。
また別の日には、点字ブロックぎりぎりに車が停められている横を歩こうとしている視覚障碍者の男性を見かけた。車にぶつかりそうになり、横に少しよけられたのだが、その時に点字ブロックを見失ってしまわれた。
おそらく車を止めていた人には、点字ブロックの『上』には車を停めていない、という思いがあったのだと思う。男性に声を掛け、一緒に歩きながらお話を聞いていると、「点字ブロックの上や近くに車や自転車があると、とても怖い」と言われた。点字ブロックの上に物を置かないというのは勿論だが、周囲1mくらいに物を置かないというふうにすべきなのではないかと思った。
点字ブロックを黄色にすること、点字ブロックの周囲にも物を置かないように周知することを、私は行政にお願いしたいと思っている。しかし一番気になっているのは、困っている人を見かけても、声を掛けない人の多さだ。
前述の女性の件のように、声を掛けることで、誰かを傷付けてしまうこともあるかもしれない。しかし、明らかに危険な状態であったのは確かだ。それでも、誰も声を掛けず、道路の向こう側にいた私が、慌てて道路を渡り、声を掛けた。これでいいのだろうか。ハードの整備も大事だが、一人一人のハートの教育も大切なのではないだろうかと思う。(兵部)
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