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「2025年問題の延長線上にある2040年問題」

 2025年問題とは、人口の多い団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になることで、医療、介護、財政、地域社会などに深刻な影響をもたらすことをいう。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、佐賀県の2025年の生産年齢人口は42万9288人なのに対し、2040年には35万8189人に減少し、逆に75歳以上の人口は2025年に14万2417人なのが2040年には15万6308人に増加する。その結果、生産年齢人口の減少は購買力の低下につながり、佐賀では高級ブランドの衣類などは売るところがなくなり、福岡まで交通費を使って買いに行くことになる。実際、武雄市の某ショッピングセンターには高価格のものはなく、低価格中心だ。
 さて、2019年4月の佐賀県健康福祉部医務課の報告によると、医療施設従事医師数は1996年の時点では40—44歳(Aグループ)をピークに、それより年齢が高い医師および低い医師は少なかった。また、20年後の2016年の時点でもそのままAグループの医師をピークに、それより若い世代がほぼ同数で推移していた。私は福岡大学の一期生と同じ1978年に長崎大学を卒業、1994年に40歳で武雄市に開業したのでAグループに入る。佐賀県の場合、新設の佐賀医科大学の一期生は1984年に卒業しており、1996年には36歳で35—39歳の年齢層に入る。したがってAグループが佐賀の医療を牽引してきたと言える。この20年間に佐賀県の医師数は1713人から2292人へと579人増加した。
 次に、病院・診療所別年齢階層で見ると、2006年から2016年までの10年間に病院従事医師は1272人から69歳までの各年齢層で290人増加し1562人、診療所従事医師は705人から730人に25人の増加のみで、60—69歳では90人から267人と増え高齢化が進んでいる。つまり、病院勤務医は増えたものの、診療所はAグループをピークに総数的には増えていない。実際、私が開業した後の30年で武雄市旧北方町では3軒の診療所が閉院し、1軒が開院した。その後、私は体調不良によりクリニックを後継者に譲ることとなったが、2026年にはAグループは全て70歳以上となり、医療施設従事医師数の集計結果に注目している。
 ところで、医師免許は更新制ではない。そのため、生涯現役を自認する同世代の仲間が、2025年問題の解決に貢献するだろう。というのは、医療の2025年問題は医師や看護師の増加により何とか乗り切ることができると思うからだ。しかし、介護の2040年問題は生産年齢人口の減少による人手不足を背景に、介護職員の待遇の大幅改善などの思い切った予算措置をしなければならず、介護崩壊はより現実味を増している。

(常任理事 田中 裕幸)

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