HOME » 協会新聞 » 2025年11月号 わたしの主張

大幅な診療報酬の引き上げを

 高市早苗総理は、所信表明演説で「国民の命と健康を守ることは、重要な安全保障」とし、「OTC類似薬など薬剤自己負担の見直し、電子カルテなど医療機関の電子化で効率的で質の高い医療を実現する。外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療の構想を策定し、医師の偏在是正や病床適正化で、高齢化に対応した医療体制の再構築を進める」と述べた。
 物価高騰と人件費上昇が進む中、診療報酬の改定率は低く抑えられており、医療機関は深刻な経営難に陥っている。より良い医療の提供には医療機関の経営の安定が必須だが、国の方策は全く不十分な状態が続いている。
 コロナ禍以降さらに医療機関の経営は深刻化し、倒産件数が増え続けている。全国の自治体病院でも2024年度は95%が赤字と報告されている。全国自治体病院協議会は2026年度診療報酬改定に向けて、引き上げや交付税措置の拡充、職員給与や消費税負担への対応などの包括支援を求めているが、政府の対応は進んでいない。自治体病院は、民間が採算を見込めない地域医療や診療領域を担う側面があり、新たなパンデミックが起こった場合でも必要な拠点となる。経営効率ではなく、公共性も重視すべきであり、採算だけで切り捨てることには納得できない。
 社会保障費は小泉政権から削減の一途をたどり、その結果医療機関の経営難が進み、地方では医師不足や診療科の偏在、小児科や産科病棟の閉鎖なども顕著になっている。医師数はOECD諸国の平均が人口1000人あたり3・5人に対し、日本は2・4人と加盟国中ワースト5位にもかかわらず、2025年以降は医学部の定員を減らす政策を取っている。歯科においても、歯科医師国家試験の合格を約2000人と定めて人数を抑制している。
 「国民の命と健康を守る」ためには社会保障の拡充が必須だ。今こそ、患者さんの窓口の負担軽減と診療報酬の大幅なプラス改定を求めたい。
(副会長 新井 良一)

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