健康に関する食情報が、マスメディアを通じて数多く国民に発信されている。健康を維持しようと食生活改善に努力している人も多い。しかし、信頼できる食情報ばかりではないようだ。 「フードファディズム(Food faddism)」という言葉がある。これは、1998年頃に群馬大学の高橋久仁子教授が紹介したと言われ、「健康や病気に対する栄養の影響を過大に信じること」または「その支持者が熱狂的に取り入れた食行動の異常なパターン」と定義されている。例えば、あるテレビ番組で健康に良い食品として紹介されると、翌日その食品がスーパーで完売してしまうような事態もその1つと言える。 フードファディズムの対象となりやすいものは、健康に好影響をもたらしそうな食品、有害性が疑われる食品をはじめとして、ダイエット食品、健康食品、ミネラルウォーターなどさまざまである。実は、私自身も友人に勧められ長年続けた健康食品が、結果的に健康に悪影響を及ぼしたという苦い経験がある。私のみならず、健康食品等で逆に健康被害が出現したり、詐欺的商法の被害にあった人の話を耳にすることもある。 人は常に健康でありたいと願っている。だが、食生活に人一倍気を配り、情報収集に努める真面目な人ほど誤った情報も信じ、フードファディズムに陥りやすいと言われている。食品は人間の健康をつかさどる一部分でしかない。ある食品を食べれば健康になる、あるいは病気になるということはない。むしろ、日々食している食品全体としての栄養価やバランスこそが大事なのである。 また、食のバランスは歯の健康にも左右される。大豆が体によいからと豆腐ばかりを食べて、咀嚼筋群が衰え、開口障害を起こしてしまった例もある。 時に有名俳優が起用され、健康食品で健康を維持しているように宣伝されるが、彼らはバランスの取れた食生活や適度な運動などの努力の結果、健康を維持している。 「そこそこの健康」を目標に、バランス良くほどほどに食べることが大切である。今一度、ご自身の食生活を見直してみてはいかがだろうか。 (副会長 新井 良一)
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