「健康寿命」という耳慣れない言葉が今年6月に厚生労働省より発表された。意味は介護不要で自立生活可能な「健康期間」ということである。 2010年の国勢調査をもとにした健康寿命は、男性70・42歳(平均寿命79・55歳)、女性73・62歳(86・30歳)で、その結果「不健康期間」(平均寿命―健康寿命)が男性約9年、女性13年となる。 加えて興味を覚えたのは都道府県別ランキングであった。トップは男性が愛知(71・74歳)、女性が静岡(75・32歳)で、この2県は男女とも高く愛知女性3位(74・93歳)、静岡男性2位(71・68歳)だった。一方、ワースト1位は男性が青森(68・95歳)、女性が滋賀(72・37歳)で、ともにトップと3歳近くの差である。また「不健康期間」の最大は男性が大分(10・3年)、女性は広島(14・55年)で、最小は男性が秋田(7・79年)、女性は群馬(10・61歳)であった。 地域間格差から読み取れる寿命の根拠も面白い。例えば静岡は元気に働く高齢者が多い、温暖な気候からくる穏やかな県民性、地場の食材が豊富で食生活が豊か、全国一のお茶の産地で全国平均2倍のお茶(カテキンによるコレステロール抑制効果)を飲んでいる、反面、青森は平均寿命でも男女ともに最下位で、習慣的喫煙者、飲酒者の割合が全国1位、男性の肥満や塩分摂取の割合が高く、日常の歩く歩数や新鮮野菜摂取量が少ない、などの生活習慣に関わるデータが如実に語ってくれている。ちなみに九州8県については暖かい3県の鹿児島(男7位、女10位)、宮崎(11位、8位)、沖縄(14位、4位)は上位1/3に、熊本(21位、21位)、佐賀(29位、25位)は中位1/3に、大分(39位、35位)、福岡(40位、44位)、長崎(45位、39位)は下位1/3の順位に位置する。この相関関係は気候、それとも? 他方、日本人は飽食の末、病気になっても病院の手厚い看護で無理矢理生かされて、平均寿命だけ延びて家族や社会を圧迫しているという声もある。胃瘻、I.V.H.、人工呼吸器などの高齢者への過度な延命措置の可否の議論も増えている。「自然死」、「尊厳死」「平穏死」についても真摯に語り合うことは一般国民にも医師にも急務だろう。 ともあれ ”団塊の世代“が65歳以上、その数3395万人になる2015年も目前だ。2042年には3878万人のピークが来る。当面、厚労省は2022年までに健康寿命の延び幅が平均寿命のそれを上回ることを目標に掲げている。厚労省がいくら笛吹けど国民や医師が踊らなければ目標の達成は無理だろうし、医療制度や社会保障制度の先行きは暗い。「健康寿命」を延ばすのは、国のため、自分のためと捉え、国民や医師の一人ひとりの意識改革が求められよう。 その小さな一歩として団塊世代の代表として私たち夫婦は朝のウォ ーキングを始めた。ただ歩くだけではと、屈伸運動、前屈運動も兼ねてゴミ拾いもしている。コースも変えるので毎朝レジ袋一杯にはなる。日本人のモラルもまだまだだ。地域の願掛け地蔵さんは必ずコースに入れてお参りしている。町の美化、心の美化、健康寿命アップのためにもウォーキングは続けたい。
(監事 上松 誠八郎)
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