かなり挑発的タイトルを掲げさせてもらったのは、6月12日の保険医協会主催の関岡英之氏の時局講演会「国家の存亡 TPPが日本を亡ぼす」を拝聴してから、今のままの政治政策が続けば大変な事態に陥ると危惧したからにほかなりません。 1989年自民党の宇野首相の時から、毎年米国から日本に向けて出されている「年次改革要望書Annual Reform Recommendation」では、政治・経済・外交・金融・社会保障・医療など、あらゆる分野にわたる「上から目線のダメだし」を日本に毎年突きつけてくるのですが、歴代の自民党内閣は、「言いなりになって米国の代弁者」となってきた経緯が明示されました。日本の政治に対してfair(公正な)、free(自由な)global(地球的視野での)さを求める等、一見まともな命題を掲げていますが、その実態は自国の企業の利潤追求以外のなにものでもない事が分かりました。 1996年末の橋本内閣時代の「金融ビックバン」で山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、北海道拓殖銀行などの倒産が起こり、それらはメリルリンチ、リップルウッド、サーベラスに乗っ取られたあげくに、生き残りをかけて残った銀行の「貸し渋り」が起こり、多くの中小企業が倒産し、時を同じくして毎年の自殺者が急激に増えて、3万人の大台を超え今に至っているのです。 次に金融関係で大きなターゲットにしたのは生命保険業界で、「毎月保険料が入るし銀行のように頻繁に金を引き出されないで、契約者が死ぬまではその金を自由に運用できる生保会社」は、大変美味しいのです。事実、その後5年間で日本の9つの生保会社が外国生保(そのうち5つは米国の会社)に吸収されました。 次に狙ったのが「郵政改革」で、小泉内閣が「構造改革」と銘打って出たが、実態は米国の代弁で、当時120兆円というカナダ政府予算に匹敵する簡保資金を有する郵政事業を民営化して上場させれば「米国の思うつぼ」になるのです。 TPPでは、医療業界に混合診療を認めさせて、一本数万円もする抗癌剤や遺伝子組み換え導入の高価薬剤を保険適用外とすれば、患者は公的保険でカバー出来ない分を民間保険に加入するようになります。また、既に日本の薬価制度で米国の約3分の1に抑えられている高額新薬は米国並みに戻して、現在20年間程度ある特許期間内は、自由申請価格でガッポリ儲けようという算段です。 米国の乳幼児の死亡率は、日本の2・6倍で先進国中ダントツに高い。これは経済的理由で受診もままならないためですが、医療費は桁違いに高い。富裕層にのみ手厚い医療になり下がるTPPを認めたら、世界に冠たる日本の素晴らしい皆保険制度が縮小・崩壊することは自明の理です。消費税10%問題とともに医療福祉業界を取り巻く環境はますます厳しさを増しますが、皆で声を上げていきましょう。
(顧問 野田 芳隆)
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