「社会保障と税の一体改革」を掲げて消費税がまず10%に増税されようとしている。消費税増税で社会保障がどれほど改善されるのかと言うと、わずか1%分の2・7兆円だそうだ。 団塊の世代が後期高齢者となる2025年度を控えて、今後ますます医療・年金・介護等の社会保障費はうなぎ昇りであることは間違いない。しかもその社会保障費は国民と企業とが負担する以外にはないのである。 将来的に消費税を社会保障目的税にするということは、企業の社会保障負担が全く無くなるということである。消費税増税に大企業が賛成し、政府を後押ししている理由はここにある。法人税を引き下げ、しかも社会保障経費までも無くしてしまうという、企業としての社会的責任を全くかなぐり捨てた身勝手な姿勢である。 さて、日本がこのデフレという経済状況下で消費税を増税しても、結局は国家の総税収が減少してデフレから全く脱却できない状況にますます陥ってしまうだけではないのか。消費税増税により国民の消費意欲は失われ、物が売れなければ企業の生産も減少せざるを得ず、従業員の給与所得が削減され、更にはリストラが行われ失業者が増加し、消費税で増加した税収を上回る法人税・所得税の減収となりはしないか。 国会議員自らが歳費削減をして無駄削減の覚悟の程を見せているパフォーマンスに踊らされてはいけない。消費税増税が決定し、東日本大震災の復興増税が終了するとともに、歳費削減は解消され、われわれの消費税負担は更に増税され持続するのである。 「国の借金がGDPの200%を越え国民一人当たり800万円であり、このままではギリシャの二の舞だ。日本は財政破綻寸前だ。将来世代に負担を付けまわしてよいのか」と、まるで消費税増税に賛成しないものは非国民であると言いたげなまでの脅し文句で、国民に増税を認めさせようとしている。しかし、国債の95%が国内で保有され、しかも海外の金融機関が保有している残りの5%も円建ての国債であるから、財政破綻など決して起きないのである。デフレを脱却し、税収が増加される経済状況を政策として打ち出すことが政府に求められることであり、消費税を増税させることではない。 さて、社会保障の充実を求めて、無駄な公共事業の削減を求めてきた私たち保険医協会の活動は正しかったのだろうか。社会保障の充実を求めることは決して間違いではないと確信するが、公共事業費が必要以上に削減されてしまったために、経済成長が鈍化してしまったのではないかと言う疑問が沸き上がってしまった。脱原発・再生可能エネルギー政策への転換、耐震・防潮対策、再生医療等々、国家と地方自治体抜きでは出来ない事業はまだまだありそうだ。 (会長 藤戸 好典)
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