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わたしたちの主張
平成23年8月15日
内部被曝の脅威

暑い8月となった。放射線被害というと外部被曝が主たるものとの一般の認識があるが内部被曝の重大性についても正確な認識が必要と考えられる。

最近では放射能のついた稲ワラを飼料として食べた牛の肉が食品としての許容量を越える放射能が計測されている。その肉を食べれば当然ながら人間の五体の中にその放射能は入ってきて、内部被曝をすることになる。

高線量短時間被曝によって生命が危険にさらされることは解り易いが、低線量長時間被曝となる内部被曝によっても、白血病や固型癌となって生命を危険にさらすことになるのは解り難いことではあるが、一層重要な問題である。放射線に敏感な小児では更に重大であるし、胎児にとっては奇形出産・死産という問題になる。

これは広島・長崎の直接、原爆投下時に現場にいなかったが、投下後1カ月以内に入市した人々が原爆症と同じような症状で亡くなったり、白血病や癌で亡くなっている。原爆投下後の広島や長崎の空気を吸ったり、水を飲んだり、皮膚が触れたりしたことで内部被曝したものであろう。

科学的な内部被曝の根拠として、1972年カナダのアブラハム・ベトカウの実験と発見がある。

液体の中に置かれた細胞は高線量放射線による頻回の反復照射より低線量放射線の長時間放射の方が容易に細胞膜を破壊することができるということである。

放射線が直接DNAを切断し、これが発癌性、遺伝毒性を持つことは考えられるが、低線量放射線の長時間照射の発癌メカニズムは酸素分子を活性酸素に変えることであり、この活性酸素が媒介となって、細胞膜を破壊し、核の中の染色体に影響を与えることが考えられている。

 8月1日で岩手県の肉牛も出荷停止となり、福島県、宮城県と3県の肉牛が出荷停止となった。稲ワラを食べた肉牛を既に多くの人が食べて内部被曝している可能性があるが、稲ワラを生産した農家や稲ワラを出荷した業者も多くの稲ワラの粉を吸い込んだと考えられるし、当然内部被曝したし、し続けているものと考えられる。臓器親和性という点では今話題のセシウム137は肝臓、腎臓、肺、筋肉に多く沈着する。

小児の被曝は深刻なので早々に手を打たなければならない。水素爆発の時点で必要なヨウ素を直ちに内服させるべきではなかったか。運動場や通学路などの除染は早急になされねばならない。小児の細胞分裂は時間単位で大人よりも多く、放射線感受性が高いので、まず小児の危険性を少なくすることが重要であり、妊婦も同様である。

内部被曝の危険性を考えると今の放射能は低線量だから大丈夫ということはできない。かような危険性を持つ全ての原発は中止に向かって進むべきであろう。

(常任理事 山口宏和)

 

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