東北大震災が起きた。マグニチュード”9“というこれまで経験のない大きい地震と続いて発生した津波による巨大な被害である。津波による被害が大きく、犠牲者のほとんどは津波による水死と見られている。 約1100年前に今回と同じ位の規模の津波が起こっていたことは推定されていたが、それが防災の専門家の対策の中には想定されていなかったといわれている。津波は想定された2~3倍の高さにおよび、防波堤をはるかに越えて、20・の陸地を駆け上っていった。 地震、津波の分野に限らず、医学、医療の分野を含め、他のどの分野においても、専門家には想定外の事象ということはないはずと期待されていると思われる。しかし、地震とそれに続いて発生した津波は想定外であったという。想定外となったのには、いくつかの理由が考えられる。 専門家の集団は非常に細かく専門的となり、閉鎖的となり、いわゆる「村(ムラ)」といわれることがある。その専門家の集団の中では、まさに専門的で特殊な狭い想定が作られる可能性がある。 また”人“の一般的な傾向として物事が順調に進んでいる時には、悪い方向のことは考える必要はないと思い込む。その結果、悪い方向のことは想定外となりやすいと思われる。 想定外となった最も大きな理由は、人類が津波、地震に限らず、自然現象をまだ十分理解できていないからと考えられる。自然現象を知れば知る程、まだわかっていないところがどこなのかがはっきりわかってくる。 わかっていないとはっきりしたところは、今わかったところよりももっと大きくさらに深いところかもしれない。 自然の全貌を人類がつかむことは、不可能だろう。まして自然現象を人間は制御できない。そうであれば、自然界の中では、人間の想定した範囲以外のことが起きても当然のこととなる。 医学、医療の分野でも、ここに挙げた理由を考えると、想定外と思われる事象が起こるだろう。 想定外の事象が起こったときはどう対応すればよいだろうか。 津波の場合に戻れば、津波はそれ以上に高い所へ行けば、必ず逃れられるという原則に従い、想定されていた以上に高いところへ逃れて助かった人達がいる。また日頃から避難訓練をしていて、その通りの行動ができて助かった小・中学生がいる。小学校、中学校が隣り合っていて津波発生を想定して、中学生が小学生を連れて逃げる訓練を年2回していたという。その訓練どおりに、中学生が小学生を連れて一緒に逃げて全員助かったという。 以上の事実から、想定外の事象が起こった時も、原則的なことは想定内のことと変わらないのであるから、原則を守って対応することと考える。 そして平常時においては、常日頃から、その原則に従った対応の訓練をしておくこと。想定そのものが不確かなものであると認識しておくことが必要と思われる。
東北大震災から40日を過ぎた。多くの方々が亡くなられ、まだ行方のわからない人々も多い。現実と思えない悲惨さは、言うべき言葉もない。本当にやりきれない。 しかし今は、復興に向かって日本中から、いや世界中からといってもよい広い大きい規模の力が集まってきている。 我々は、震災から東北地方の復興および新しい村、町、都市をつくるという大きな夢、希望に向かっている。21世紀の新しい村づくり、町づくり、都市づくりに力を尽くす気運に満ち満ちている。 (新太郎)
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