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わたしたちの主張
平成23年6月15日
経済成長とは何?
 東日本の大震災と福島原子力発電所の重大事故によって、日本の経済は大きな損失を被り、中国、アメリカをはじめ、多くの国々の経済にも影響を与えた。経済大国日本の技術が生み出した製品が世界中に輸出されていることと、世界中の経済がつながりを持って成り立っていることを再認識した。震災と原発事故により日本経済の指標となるGDPはマイナス成長である。

 ところで経済成長とは何なのであろうか?経済成長はわれわれに何をもたらすものなのであろうか。経済は本当に成長し続けなければならないのであろうか。そしてまた、人口減少と高齢化が進行していく日本において、経済成長の指標たるGDPが増加し続けるということが可能なのであろうか。GDPが中国に追い越され経済大国第2位の地位を奪われたが、経済大国日本の中で生活しておりながら、経済成長とは一体全体何なのかをゆっくりと時間をかけて考えてみたことがないことに気がついた。

 働いて手に入れたお金で品物を買ったり、サービスを受けたりすることは個人レベルの経済であろうし、効率的に利益を最大化し、他社より優れた製品を製造したり、サービスを提供したりは企業レベルの経済活動であろう。ところで国家レベルの経済活動・経済成長となると、どうも私の理解を超えたところに存在するようである。

 医療・介護・年金・福祉、教育から人口減少問題や貧困問題に至るまで、経済成長が行われれば改善・解決されるかのような経済発展至上主義が正義を得たかのごとく語られている。

 経済大国第1位のアメリカを考えてみてほしい。金融工学なる手法を駆使して、製品を作り出すでもサービスを提供するでもない、金を金で買うという経済を生み出し、世界中の富を収奪したのである。一部の超富裕層に富が集中し、医療保険に加入できない国民が多数存在し、医療保険に入っていても制限された医療しか受けられない社会なのである。

 経済成長が人間社会の繁栄と進歩につながるためにはいかなる政策を行うかにかかっているのであり、経済成長そのものが人間社会の繁栄と進歩を作り出すものではない。戦後めまぐるしいほどの勢いで経済発展を遂げ生活の利便性は大きく向上したし、これでもかと思えるほどの品々があふれ、われわれの欲求と欲望をかき立てているが、その代償として失われたものがまた多いことに目を向けるべきである。

 保護主義的なあらゆる障壁を廃し、産業の自由な競争を促進し、世界を同一の市場、同一のルールで運用することによって紛争や戦争のリスクを軽減し、同時に経済の発展を促すという大義のTPPであるが、社会基盤の大きく異なる国家間での同一ルールがきちんと機能しなければ、強者と弱者の違いがますます増幅される危険性を含んでいることに十分注意を払う必要がある。

 経済成長とは何なのであり、われわれに何をもたらすのかをゆっくり考えてみてはいかがでしょうか。
 (会長 藤戸 好典)

 

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