HOME » 協会新聞 » 201012TPP

バックナンバー

 

わたしたちの主張
平成22年12月15日

 日本の農業とTPP

 健康志向の高まりもあり、食の安全が見直されている。スーパーでも有機栽培や減農薬の表示が目に付くようになり、地産地消をテーマに営業する道の駅のレストランなども増えている。私も食生活には気を使っており、地元産の無農薬または減農薬の野菜をはじめ、肉や魚も可能な限り近くで飼育されたものや獲れたものを使うように心掛けている。

 佐賀は米、肉用牛、みかん、いちご、玉ねぎなど多種多様な品目の生産を誇る農業県だ。日本の食料自給率が四〇%前後を推移する中、佐賀は平成二十年度で一〇七%(農林水産省資料)と一〇〇%を超える。地元でよい食材が手に入りやすく、食に関しては安心して生活できる恵まれた県と言えよう。

 近頃新聞紙面でTPP問題に関する記事を目にする。TPPとは「環太平洋戦略的経済連携協定」の略で、現在シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの四カ国が加盟。これにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの五カ国を加えた計九カ国が新たにTPPの発足に向けて交渉を開始しており、日本経団連も積極的な参加を呼び掛けている。これに参加すると、関税が免除され、外国から安い農水産物が入ってくることになる。TPPの影響は様々論じられているが、国内の農産物生産は減少し、日本の食料自給率が現在の四〇%から一四%まで減少するとの試算もある。民主党政権は食料自給率五〇%への引き上げを掲げていたはずだが、これでは公約に逆行してしまうのではないか。

 今でも日本の農家は輸入農産物の関税の低さに苦しい経営を強いられている。TPPに加盟すれば、ますます日本の農業は疲弊し、後継者も育たなくなる。佐賀でも農産物の生産・流通に大きな影響が及ぶだろう。価格の問題だけでなく、輸入食材は安全性についても不安が拭えない。

 政府は拙速な判断を避け、食料自給率の向上を含めて日本の農業を守り発展させる政策をすすめるべきではないか。日本の農業の将来像を国民に示し、議論を尽くすべきだ。

 私も医療人として、国民が健康に生活できるよう、今後の農業政策について注視していきたい。

(副会長 新井 良一)

 

●お問い合わせ ●リンク