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わたしたちの主張
平成22年9月15日

「国民概算医療費過去最高を更新」の是非


 昨年度の概算医療費は前年度より約六千億円増の三十四兆一千億円(前年度比一・九%増、休日数などの影響補正後は同二・二%増)だったことが厚生労働省の集計で分かった。六年連続の増加となり、過去最高を更新。

 昨年度に導入された後期高齢者医療制度分は十一兆四千億円で、全体の三三・五%だった。同省保険局調査課では、「昨年度の診療報酬改定でマイナス〇・八二%だったことを考慮すると、伸び率は例年並みの三%程度になる」としている。国民一人当たりの医療費は二十六万七千円(前年度比一・九%増)。年齢別では、七十歳未満十六万四千円(同二・〇%増)、七十歳以上七十五万七千円(同〇・一%減)で、このうち七十五歳以上は八十六万三千円だった。

 また、診療種類別では、診療費二十八兆六千億円(前年度比一・二%増)、調剤五兆四千億円(同五・三%増、補正後五・八%増)。診療費の内訳は、入院十三兆六千億円(同一・九%増、同二・二%増)、入院外十二兆四千億円(同〇・二%増、同〇・六%増)、歯科二兆六千億円(同二・六%増、同二・七%増)だった。(二〇一〇・七・二十一医療介護CB News/キャリアブレイン)
このニュースをいろいろな立場の人が見たとき、どう読み取るだろうか……。

 医療に携わる人々…医療費の増加はわれわれ医療人の努力の成果である。医学の進歩によって周産期医療や終末期医療も著しく進歩し今までは助からなかった人を救うことができるようになった。一九六〇年には周産期死亡は千人中四十一人だったものが現在は四人である。これは現場の産婦人科、小児科の先生方の絶え間ない努力の賜物である。また歯科界においても今までは抜去せざるをえなかった歯牙を保存する技術も格段に進展し、国民への啓蒙活動にも努力した結果、歯周病の予防のため定期的に歯科医院に通う方も最近ではかなり増えてきた。つまりこのことはわれわれにとって誇らしいことであるといってよい。

 厚生労働省・財務省など国の立場…医療費を含む社会保障費削減をもくろむ国にとっては苦々しい結果であろう。ただこの結果を公表することにより国民への世論を操作して「医療費にこれだけお金がかかるのなら消費税増税もやむなし」などという方向に持っていこうと企んでいるかもしれない。また次の診療報酬改定時にさらなる改悪を画策していることだろう。

 国民…国民の皆さんの反応は二つに分かれるのではないか。「お医者さんは頑張ってわれわれのために努力してくださってるんだ」という肯定派と「また医者が金儲けをして」とみる否定派だ。果たしてどちらが多数派なのだろう。
一つのニュースをいろいろな角度からいろいろな立場の人が見るとその捕らえ方は様々である。われわれも医療制度改革、診療報酬改善などの要求をするときにはその事を考慮して活動しなくてはならないのではないか。われわれの要求だけ突きつけて国民の世論が置き去りにされていれば、たとえそれが正しい意見だったとしても受け入れられないだろう。海堂尊氏の著書の中の一説に「医学は単なる学問であり医療とは社会システムである」とあった。「われわれは医師・歯科医師だから」という驕りは捨てて社会システムの中でどう共存していくのかともう一度考え直してみたい。

 (グッチー&白鳥)

 

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