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わたしたちの主張
平成22年8月15日

 保険医協会活動の彼方にあるもの

 保険医協会の目的は保険医の経営を守ることと、国民医療の充実を図ることである。保険医の経営を守ることとは開業医の利益を守るという利己的な動機ではなく、地域の医療を守る砦としての役割の保険医を財政的に保障するというように考える。

 最近、勤務医の労働が過酷であるのに開業医は楽をして儲けているという論調を聞くが、今年も五十代六十代で四名の医師、歯科医師の会員が亡くなられており、決して楽な仕事を開業医がしているわけではない。開業医は人事、教育、財務、経営全般に責任を負うとともに、医療においても独自色を出す研さんに勉めないと誰も助けてくれない。孤軍奮闘であり、勤務医と負けず劣らずのストレスに晒されている。その中で元気に明るく、しかも思いやりを持って患者さんに対応することになる。

 開業保険医の取柄は他の医師仲間の批判を気にすることなく、独自色を出して、保険医療の範囲内ではあるが、幾分自由な医療ができることである。 全国の保団連医療研究集会や保団連九州ブロックの医療交流集会が個々の保険医の長年に渡る研究の発表の場となっており、次の一年への意欲を作り出す場となっている。

 昨年の佐賀県保険医協会の医科研究会は二回しかできなかったが、二ヶ月に一回位はこのような保険医個人の発表の場でもあってもよいかと思うがいかがだろうか。

 そうすると全国や九州ブロックでの発表が佐賀県保険医協会の労作として可能となる。

 このことは国民医療の充実というもう一つの保険医協会の役割を一歩前進させることになるだろう。
今や医療費の問題は財政がひっぱくしているので財政支出増加は仲々困難であろう。しかし、予防を重点にすれば医療費は削減できるはずである。例えば血糖が高いだけの糖尿病の場合、殆ど自覚症状がないため、健診で受診を勧められても五割の人は医療機関を受診しない。昨年度特定健診を受けた人は二五%にすぎず、糖尿病であっても健診後に受診したのはその半分にすぎなかった訳である。特定健診さえ受けていない残りの七五%の人は更に悲惨ではなかろうか。糖尿病腎症が腎不全になり、透析になると本人が一番大変で週に三日は四~五時間拘束される。

 しかも腎透析になると一人当たり年間六百万円の医療費が必要になる。佐賀県の昨年度の国保の新規透析患者は百四十九名で、医療費は概算で九億円である。透析総患者数(五月)は六百七十二名で医療費は四十一億円となる。

 糖尿病は自覚症状がなくとも放置すれば十年~十五年で透析となる可能性が高い。怖がることはないが、無視したり放置したりせず、家庭や地域や職場で合併症を防ぐ手立てを取ることが国民的な見地からの有益な医療費削減であろう。

 保険医協会も一役担えるのではなかろうか。

 (常任理事 山口宏和)

 

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