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わたしたちの主張
平成22年6月15日

 ああ無情

 口蹄疫で何の罪もない牛や豚の殺処分の報道を連日見聞きし、心を痛めていない人はいないだろう。広範な感染拡大に対し、発生地域の半径十キロ以内の総ての牛と豚等にワクチン接種を行い、感染拡大を防いだうえで、全頭を殺処分するという非常に痛ましい事で、対象の牛や豚は当初三十万頭と言われていたが、四十万頭にも達する勢いだ。

 口蹄疫拡大には、報道によると初期の対応に問題があったとの事。畜産学部を卒業しても最近のペットブームで家畜の獣医師になる人が少なくなり、今回の様に口蹄疫の非典型的症例の発生に対し、初期対応等が遅れ後手に回り、感染が拡大したのであろう。

 この事は我々医療にもあてはまり、小児科・産婦人科及び外科で訴訟や時間外労働が多いとか、汚いとかで敬遠されて医師不足が問題となっている事と類似している。

 殺処分されても埋葬出来る土地がなく、特に牛と比較すると千倍も感染力が強いとされる豚が何日間も放置されていると聞き、感染の深刻さがうかがえる。その為に発生源及び感染経路もはっきりせずに外出を控えたり、イベントの中止や延期などで地域経済にも深刻な影響が出ている。神戸牛や近江牛等の三分の一は宮崎産牛との事で、地方への影響も大である。さらに深刻なのは、何十年もかかってやっと作り上げ、何物にも代え難い種牛も殺処分の対象となり、まさに宮崎牛ブランドの崩壊を窺わせ、危機的状態で、その復活にも長時間を要しそうだ。

 小生も高校生の時に、「将来は酪農家になりたい。」という希望を持っていた経緯もあり、特に牛や豚を大事に育てられた畜産農家の人々に対して、何とも言い様がない。また牛や豚も人に食されてこそ本望なのに、それもままならず、犬死以外の何物でもない。

 政府は五月二十八日に口蹄疫特措法を成立させ、口蹄疫への緊急対策を講じている。感染拡大を防ぐための予防的な殺処分を強制的に行えるようにするほか、家畜の埋却用地を農家でなく国の責任で確保する事が出来る。また処分された家畜の実質的な全額補償、その他の被害農家の経営再建のための資産の無利子貸し付け等を柱としている。

 しかし、いかなる法律が出来ようとも、農家の人々の心は癒される事はないであろう。今後は二度とこんな悲惨な感染症が起こらない様な予防法の確立を。さらに仮に万が一発生したとしても迅速な対応を切に切に望みたい。

 ささやかながら小生に出来る事と言えば、宮崎県特産物を購入するか、牛や豚や地鶏の購入か。

 (そうだ、今夜は宮崎牛を食べよう)

 

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